非政府組織(NGO)は、現代の国際社会において欠かせない存在です。
貧困、飢餓、環境問題といった地球規模の社会課題に、市民の立場から積極的に取り組む彼らの姿勢や活動は社会に大きな影響を与えています。
しかし、NGOがどのような組織であり、NPO(非営利組織)との違い、さらにはどのような意義や役割を持っているのかについては意外と理解されていないかもしれません。
今回は、NGOの定義や歴史、活動分野、そしてSDGsとの関連性を解説していきながら、代表的なNGOとその影響力についてご紹介します。
非政府組織(NGO)とは?
定義
NGO(Non-Governmental Organization)は、文字通り「政府に属さない組織」を意味しています。一般市民や民間の立場から、政府の手が届かない社会的な問題に取り組む団体です。
日本語では「非政府組織」と訳され、一般的には国際的な社会問題に取り組むことが多いです。たとえば、貧困や環境問題、人権擁護などがその代表的なテーマです。
重要なこととしては、NGOは非営利で活動していますから、営利企業とは異なり、収益を目的とせず、得られた資金はすべて団体の活動を継続していくために再投資されます。
歴史
NGOの歴史は意外と長く、19世紀の人道的活動にまで遡ります。
特に、1864年に設立された赤十字社がその起源としてよく知られています。戦争や災害の被害者を救済するために民間人が立ち上がり、政府の枠を超えて活動を展開したのが始まりとされているです。
そしてその後、1945年に国際連合(国連)が設立され、NGOは国連と連携してより高度に組織化されました。
1960〜70年代にアジアやアフリカの独立運動が広がると、NGOは発展途上国の支援を行う存在として国際的な役割を強めました。日本でも1979年のインドシナ難民問題をきっかけに、NGOが本格的に活動を開始しています。
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NGOとNPOの違い
定義の違い
NGOとNPOはよく混同されがちですが、活動のフィールドや目的において明確な違いがあります。
NGOは主に国際的な問題、貧困や人権、環境といった地球規模の課題に取り組むのが特徴ですが、NPO(Non-Profit Organization)は、国内での社会的な課題に対して活動を行うことが多く、たとえば地域社会の福祉向上や教育支援が主な分野です。
また、NGOは国連などの国際機関とも強い結びつきを持っている点が異なります。
法人格に関する違い
実はNGOには“NGO法人”という法人格は存在しません。
このため多くのNGOは、活動を進めるためにNPO法人や公益法人として登録され、法的な資格を取得しています。
日本では特定非営利活動法人(NPO法人)として登録することで、政府や企業からの資金援助を受けやすくし、信頼性を高めています。このような法人格の有無は、資金調達や活動範囲に大きな影響を与えるため、重要なポイントです。
「NGO」という法人格が存在しないにもかかわらず、「NGO」という名称が使われる理由ですが、これはNGOが活動内容や目的を示す概念であるためです。
NGOは「非政府組織」として国際的な課題に取り組む団体を指しますが、特定の法人格を意味しません。ただし、「NGO」という名称を使うことで、国際的な認知や信頼を得やすくなるのです。
NGOという言葉自体は、国連で政府組織と民間団体を区別するために使われ始めた歴史があり、それが広く定着しているようです。
NGOの活動テーマ
テーマ別の活動内容
NGOはさまざまな領域で活動していますが、その活動は大きく11のカテゴリーに分けられます。
- 教育・職業訓練:教育の機会を提供し、貧困層や被災地域での職業訓練を行う。
- 開発・貧困:農村地域の貧困解消や持続可能な開発目標(SDGs)に沿った活動。
- 保健・医療:医療サービスの提供や、地域の保健衛生を改善する。
- 環境保護:気候変動対策、植林、自然資源の持続可能な管理。
- 飢餓・災害支援:飢餓に苦しむ地域や災害被災地への支援活動。
- 農業・漁業の発展:持続可能な農業・漁業の推進。
- 人権擁護:差別撤廃やジェンダー平等、労働者の権利保護。
- 政策提言:政府や国際機関に対する政策提言。
- 平和・政治安定:紛争解決や平和構築活動。
- 経済の発展:地域経済の発展を支援するためのプロジェクト。
- ネットワーク構築:他のNGOや国際機関との協力ネットワークを構築。
NGOとSDGsの関係
NGOが果たす役割
持続可能な開発目標(SDGs)は、2030年までに世界全体で達成すべき17の目標を掲げています。
NGOはこれらの目標達成に向けた重要な担い手です。たとえば、目標1「貧困をなくそう」や目標4「質の高い教育をみんなに」など、SDGsの達成にはNGOの活動が欠かせません。実際、NGOは国際的な支援活動を通じて、これらの目標を着実に進めています。
NGOの政策提言と普及啓発活動
NGOは、政策提言を行うことで政府や国際機関に対して影響力を持っています。
たとえば、アムネスティ・インターナショナルは死刑廃止を目指す活動として、各国政府に対して法改正を求める提言を行っています。
また、一般市民や企業に対しても普及啓発活動を行い、社会全体の意識改革を進めています。
代表的なNGOをご紹介
公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
アムネスティ・インターナショナルは、国際的な人権擁護団体として1961年に設立されました。
死刑廃止や拷問の撲滅を掲げ、世界中で活動を展開しています。特に日本では、死刑が依然として存在しているため、このテーマでの活動が注目されています。
国境なき医師団(MSF)
国境なき医師団(Médecins Sans Frontières, MSF)は、紛争地域や災害被災地で医療支援を行う国際NGOです。
彼らの活動は、命の危機に直面している人々に対する緊急医療支援を提供することに焦点を当てており、迅速な対応が求められる場面での活動が際立っています。
公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
セーブ・ザ・チルドレンは、世界中の貧困に苦しむ子どもたちを支援するNGOです。
栄養改善や教育機会の提供、そして子どもたちの権利を守るための活動を行っています。
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
WWFは環境保護を目的とした国際NGOで、絶滅危惧種の保護や気候変動への対策を行っています。
彼らの活動は、自然環境の保全とともに、人間の生活と調和した持続可能な発展を目指しています。
NGOの存在意義とその影響力
社会的意義
NGOは、政府や国際機関が対応しきれない問題に取り組み、声にならない存在のSOSを国際社会に届ける役割を果たしています。
地球規模での問題解決に向けた独立した視点を持つNGOの存在は、社会にとって非常に重要であり、国際会議や政策提言の場においても大きな影響力を持っています。
特に国連との協力関係は重要で、多くのNGOが国連経済社会理事会(ECOSOC)に諮問的地位を持ち、政策決定に関わる力を持っています。
まとめ
非政府組織(NGO)は地球の市民が主体となり、国際的な課題に対して独立した立場で取り組む重要な存在です。
NPOとの違いを理解し、SDGsの達成に向けたNGOの活動を知ることで、私たちも社会の一員として何ができるのかを考えるきっかけになれば、と思います。
キフコの一言
NGOの活動は、基本的には私たちからの寄付やさらには助成金などがありますが、その活動を支える重要な資金源の一つとしてODA(政府開発援助)があります。
ODAとは、政府が発展途上国の開発や福祉向上を目的に提供する支援ですが、これを受けて現地で具体的な支援活動を行うのがNGOです。
NGOはODAからの資金や技術を活用し、教育、医療、環境保護などの分野で、きめ細やかな支援を提供することができるんです。
NGOは民間の団体であることから、現地のニーズを把握しやすく、ODAの支援を効果的に届ける重要なパートナーとなっています。