勝手にレビュー【国境なき医師団(MSF)】への寄付を検討するなら、活動と実績を理解しよう

国境なき医師団(Médecins Sans Frontières: MSF)は、世界中の医療が届かない地域で人道的な医療支援を行う団体です。
紛争、自然災害、貧困により危機に瀕する人々に対し、独立・中立・公平な立場で活動を続けてきました。2023年、MSFは75以上の国で活動を展開し、主に紛争地域や自然災害被災地などで医療援助を行っています。

2023年、トルコとシリアで発生した大地震では迅速に活動を展開し、避難民への医療援助や物資提供を行いました。
紛争地での活動も活発で、パレスチナやスーダンなど、極めて危険な地域でも医療支援を続けています。特に注目すべきは、緊急事態発生からわずか48時間以内に現地に医療チームを派遣できるという国境なき医師団(MSF)の機動力です。
この迅速な対応が多くの命を救っているのです。

また、MSFは医療活動だけでなく、「証言活動」という役割も果たしています。
医療援助を通じて現地で目の当たりにする人道危機を世界に向けて発信し、国際社会に訴えかけるという重要な使命を担っています。
この活動によって現地のリアルな状況が流布され、国際的な支援を受けやすくなる効果も生まれています。

主要な活動内容

国境なき医師団(MSF)の活動は多岐にわたりますが、まずは次の大きな3つの分野に注目してみたいと思います。

  1. 紛争地での医療支援
    スーダン、パレスチナ、アフガニスタンなどの紛争地域では、医療へのアクセスが制限されています。
    国境なき医師団(MSF)はこうした地域において、負傷者や病気の患者に対する医療提供を行い、医療インフラが崩壊した地域での救命活動を続けています。これらの地域では、時に医療従事者自身が生命の危険にさらされながらも、現地の人々に医療を提供しているのです。
  2. 感染症対策
    感染症対策も国境なき医師団(MSF)の重要な活動のひとつです。
    エボラ出血熱や結核、マラリアなど、深刻な感染症が蔓延する地域での予防接種や治療を行っています。たとえばエボラの流行地では専門的な治療施設を設け、感染拡大を抑えるための活動を実施。新型コロナウイルスのパンデミック下においても、世界各地で治療支援を行い、多くの命を救いました。
  3. 自然災害対応
    自然災害も国境なき医師団(MSF)が力を入れている分野です。
    まだ記憶にも新しいですが、トルコ・シリアでの地震、モロッコの洪水、アフガニスタンでの地震など、災害発生直後から医療支援を開始し、被災者に必要な医療や支援物資を提供しています。災害時には、被災者の健康を守るための衛生管理や水の供給も重要な役割を果たしています。

達成された成果と受益者数

国境なき医師団(MSF)の活動は、現地で直接的な支援を必要とする人々に大きな影響を与えています。
2023年には約4,116名のスタッフが派遣され、数千人以上の受益者が医療支援を受けました。特に紛争地では医療インフラが機能していない中で、国境なき医師団(MSF)の活動はなくてはならないものになっています。
パレスチナのガザ地区のような紛争の激化する地域の中でも医療活動を提供し続けています。

こうした成果は、国境なき医師団(MSF)の国際的な活動規模の大きさと、その効果の必要性を物語っています。
寄付を通じて支えられる彼らの活動は、世界中の人々に希望を与え続けているのです。

収支状況

寄付を検討する上で団体の財務状況は重要な判断材料です。
国境なき医師団(MSF)は、厳正かつ極めて透明性の高い財務運営を行っており、全体の収入の約91%が民間からの寄付によって賄われています。

政府からの資金は極力排除し、政治的・経済的な圧力を受けることなく独立した活動を続けています。

特に、遺贈寄付企業からの寄付も増加しており、多様な資金調達手段を持つことが、長期的な活動の安定性を高めています。また、支出面では事業費や医療費が大半を占めており、スタッフ給与や施設整備にも適切に資金が使われているようです。

資金調達の状況

国境なき医師団(MSF)は、従来の個人寄付に加え、クラウドファンディング、遺贈寄付、相続寄付といった多様な資金調達手段により成り立っています。
これにより、より多くの人々が様々な手段で簡単に支援できるようになっており、持続的に寄付者数が増加しています。
特に、リテンション率(寄付者の継続率)が高いことが特徴で、MSFは長期的な資金基盤を確保していると言えるでしょう。

個人だけでなく企業との連携も活発に進んでおり、多くの企業が国境なき医師団(MSF)を通じて社会貢献活動を行っています。そのCSR(企業の社会的責任)活動の一環としての寄付も、MSFの活動を支える大きな柱となっています。

財務の健全性

国境なき医師団(MSF)は2023年において、流動資産と流動負債のバランスが良好で、負債が前年から12.5%減少するなど非常に健全な財務状況を維持しています。
また正味財産も前年から20.8%増加しており、財政基盤の強化が進んでいます。このような健全な財務状況は、寄付者にとっても安心材料となるはずです。

ガバナンスと透明性

国境なき医師団(MSF)は、定期的に内部監査と外部監査を実施し、財務や業務の適正な運営が確認されています。日本事務局においても、理事会が運営方針を策定し、適切な監視を行う仕組みが整っています。

寄付者が安心して支援できるのはこのような透明性の高いガバナンスが存在するためであり、活動報告書は毎年公開しています。
内容は非常に詳細で、寄付金の使い道が明確に示されています。

社会的インパクト

国境なき医師団(MSF)の社会的インパクトは計り知れません。
医療が届かない地域で命を救う活動を行うMSFは、長年にわたって世界中で尊敬を集めています。例えば、アフリカの感染症流行地域では、MSFの活動によって多くの命が救われており、現地での医療インフラの構築にも寄与しています。

長期的なインパクトとしては、結核やマラリアの治療・予防活動が挙げられます。その結果、安定的かつ持続的な健康改善が実現されており、国境なき医師団(MSF)の活動は短期的な支援にとどまらず、地域社会全体の健康状態を向上させています。

寄付の活用方法とその効果

国境なき医師団(MSF)に寄せられた寄付金は、その大部分が直接的な医療活動に使用されています。
医薬品の購入や医療設備の整備、病院建設にあてられるなど、寄付者の意向に沿った形で資金が運用されているものと思います。

未来の展望と課題

今後、国境なき医師団(MSF)はさらなる気候変動や新たな感染症に対応するための準備を進めています。
気候変動が原因で発生する災害や感染症の蔓延は、今後さらに深刻化することが予想されていますが、これに対処するために資源を投入し、対応力を強化していく計画がありました。


グローバルヘルスの未来に貢献する

国境なき医師団(MSF)は、医療支援を通じてグローバルヘルスの未来を築く重要な役割を担っています。低所得国や途上国、紛争地域のような医療資源の乏しい場所での活動は、国際社会全体の公衆衛生向上に寄与しています。

国境なき医師団(MSF)の取り組みを支える革新的な技術とアプローチ

国境なき医師団(MSF)が行っている医療支援には、常に革新性と先進的な技術が活用されています。
近年では、遠隔医療やモバイルクリニックの導入がその代表的な例ですが、例えばアフリカや中東の紛争地域では十分な医療設備が整っていない状況が多く、現場に医療チームを派遣するだけでは適切な支援が届きません。そのため、国境なき医師団(MSF)は遠隔地での診療や、医療専門家によるリモート診断を行う技術を活用しています。

さらに、モバイルクリニックの導入により、地域住民が病院までアクセスできない場合でもクリニック自体を移動させて治療を行うことが可能です。移動が困難な難民キャンプや災害地域でも、継続的に医療支援が提供できるようになっています。

長期的な視点で見るMSFの貢献

国境なき医師団(MSF)の活動は、単にその瞬間その場所の命を救うだけではなく、長期的な視点で見ても、地域の医療インフラの強化につながっています。エボラやマラリアなどの感染症が流行してしまう地域では、国境なき医師団(MSF)の支援により新しい医療施設が設立されたり、現地スタッフの医療スキルが向上することで、その地域における持続的な健康改善が図られています。

さらに国境なき医師団(MSF)は地元の医療従事者の教育訓練も行っており、短期的な救援活動にとどまらず、地域社会全体の医療システムの強化に貢献しています。こうした長期的な視点での取り組みは、まさに社会的正義を体現していると言えるのではないでしょうか。
彼らが活動する地域は多くの場合、医療が不公平に配分され、貧困層や紛争に巻き込まれた人々が取り残されているような場所です。国境なき医師団(MSF)はこうした人々にも平等に医療を届けることを使命としており、その活動は社会的インクルージョンを推進するものです。

そして、国境なき医師団(MSF)の活動はそのほとんどを一般市民である寄付者からの支援によって成り立っており、特定の政府や経済的な権力の影響を受けずに独立して活動できるのも強みです。この独立性こそがMSFの公正性を高め、受益者や寄付者、さらには世界に対する信頼性を確保しています。

社会的インクルージョンとは、年齢、性別、貧困、障害、民族などの違いによって排除されることなく、誰もが平等に社会の一員として参加できる状態を指しています。
つまり、すべての人々が社会の中で公平に扱われ、社会的・経済的・政治的な機会やサービスを受ける権利を持つことを目指す概念です。

持続可能な開発目標(SDGs)との関わり

近年、持続可能な開発目標(SDGs)が世界中で注目されていますが、国境なき医師団(MSF)の活動は、このSDGs達成に向けた重要な役割を担っています。
SDG3:すべての人に健康と福祉を」という目標に対して、MSFは具体的な医療支援を通じて貢献しています。

例えば、母子保健の改善や感染症の撲滅に向けた取り組みは、SDGsの健康目標に直結しており、国境なき医師団(MSF)の活動はその達成に大きく寄与しています。

国境なき医師団(MSF)に寄付することの意義

国境なき医師団(MSF)に寄付することは、単なる金銭的な支援以上の意味を持つのかもしれません。それは、世界中で苦しむ人々に対して直接的な命の支えとなる行為であり、医療の届かない地域に光を届けることです。

寄付によって、国境なき医師団(MSF)が提供する医療が一人でも多くの人に公正に届き、その地域社会全体の健康が改善されることを考えると、その影響は計り知れません。特に、私たち日本からの寄付者が多く関わっていることで、日本の支援が世界中に広がっているという事実に、寄付者としての誇りを持つことができるでしょう。

キフコの一言

国境なき医師団(MSF)のユニークな活動として、エピソードを1つご紹介したいと思います。

あるスタッフさんは、タンザニアの難民キャンプにありトリアージルーム(患者の重症度に応じて治療の優先順位を決定する部屋)に、座る場所や天井がなかったりと、患者さんが長時間待つには非常に厳しい状況を危惧していました。

そこで、床をコンクリートからタイル張りにし、天井や壁をきれいに整備したそうです。それは、患者さんが治療を待つ環境を改善し、安心感を与えるためでした。

患者さんが一番最初に入る空間を快適にし、「ここで治療を受けられる」という安心感を持ってもらうことを目指したとのこと。
医療を超えた支援がとてもあたたかく、私の好きなエピソードの一つです。

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投稿者: FIRST DONATE編集長 髙崎

非営利団体のファンドレイジング/広報支援を生業とするDO DASH JAPAN株式会社スタッフであり、FIRST DONATE編集長。 自身の体験を元に、寄付やソーシャルグッドな情報収集/記事制作を得意とする。