目次
序章:「生理の貧困」とは何か?
「生理の貧困」とは、経済的理由で必要な生理用品を購入できず、生理を迎えるたびに困難を感じる状況を指します。
これは個人の羞恥心や生活習慣の問題ではなく、社会構造によって生じる“見えにくい貧困”です。日本でも、この課題は徐々に認知されつつあり、その実態が調査から明らかになっています。
第1章:最新データに見る実態
● 貧困経験者は8.1%
厚生労働省が2022年に実施した調査では、18〜49歳の女性のうち8.1%が、新型コロナ以降「生理用品の購入・入手に苦労した」経験があると回答しています。
特に20代や世帯年収300万円未満では割合が高く、生理の貧困が「若者世代」や「低所得層」で顕著に現れていることが分かります。
● 衛生・健康リスク
支援がないと、生理用品を長時間使用したりトイレットペーパーや布を代用する女性が多く、安全性や衛生性に問題が生じます。
厚労省調査でも、かぶれ(73.5%)、かゆみ(71.5%)などの身体症状が頻繁に発現すると報告されています。
● 社会生活への影響
生理用品が足りずにイベントを諦める(約40%)、家事や仕事に集中できない(約35%)、学校や職場を休む・遅刻する(34%)といった影響が出ています。
また、精神的ストレスの指標であるK6では、苦労経験者の69.3%が心理的苦痛スコア10点以上と、心の健康にも深刻な影響が出ています。
第2章:日本各地の支援制度と取り組み
● 地方自治体での無償配布
内閣府の調査(2024年10月現在)によると、多くの自治体が学校や公的施設のトイレに生理用品をストックし、カード提示で非対面受取できる仕組みを導入しています。
- 例:東京都豊島区では、個室トイレにQRコード式ディスペンサーを設置し、必要な枚数を出せる仕組みが稼働しています。
- 千葉県では県立学校123校に、非対面・対面の2方式でナプキンを提供し、約7,400枚が利用された報告があります。
さらに、日野市、立川市、さいたま市、府中市、沖縄県などでも、市役所や図書館、児童館など複数の窓口で生理用品の無料配布が行われています。
● フェムテック企業も新技術で支援
名古屋市などでは、広告付きディスペンサーによる無料提供サービス「OiTr(オイテル)」を導入。スマホ認証で提供を受けられ、透明性やプライバシー保護に配慮するモデルです。

第3章:国際的な視座──台湾やスコットランドの先進例
● 台湾:全国の学校で無償化
2023年7月以降、台湾では全公立学校において生理用品が無償提供される制度が施行されています。台北メトロや公共施設でも常設ディスペンサーが導入され、公衆衛生と教育への配慮が高い評価を受けています。
● スコットランド:法的に義務化
スコットランドでは、2020年11月に全ての学校で生理用品を無料で提供する法案が全会一致で可決されました。専用ウェブやアプリで配布場所が検索できるなど、デジタル面でも先進的です。
第4章:読者が今できること
① 物資寄付・ストック提供
自治体や民間団体に未使用の生理用品を寄付することで、必要な人に届きやすくなります(学校・相談窓口など)。
② 金銭的支援
NPOや自治体のプロジェクトにクラウドファンディングや寄付で支援することで、制度の維持・拡充を後押しできます。
③ 情報発信と啓発
SNSやコミュニティで「生理の貧困」の実態を共有し、周囲の理解と制度改善の機運を高めましょう。
④ 制度改善への提言
自治体が実施するパブコメ(意見募集)に参加することで、カード利用・非対面提供・ストッカー設置などを提案することもできます。
結語:「誰もが尊厳ある毎日を送れる社会へ」
「経済的理由で生理を迎えるたびに困る」状況は、誰からも見えにくい問題です。
でも、制度やルール一つで誰もが尊厳を保って過ごせる環境に変えることができます。
生理の貧困を社会問題と認識し、誰もが当たり前にケアできる社会をつくることは、非常に大きな前向きな一歩です。
小さな行動—ストック提供、寄付、声を伝えること—が、尊厳と安心を支える社会の礎になります。
FIRST DONATEは今後も、「誰も一人にしない社会」をめざすための制度とつながりを支える情報を届けていきます。あなたの一歩が、誰かの安心につながることを願っています。