目次
孤独・不登校・生きづらさに対して、いま必要なのは「環境」への支援です
若者の課題は、ひとつではありません
東京で若者支援が必要とされる理由は、単に「悩んでいる若者がいるから」ではありません。
実際には、複数の課題が重なり合って、孤立やメンタル不調、生きづらさとして表れているからです。
いまの若者をめぐる状況を見ると、少なくとも次の4つは無視できません。
1. 孤独感そのものが、若年層で強く出ています
内閣府の孤独・孤立に関する全国調査では、孤独を感じる人は全体でおよそ4割前後で推移しており、若年層はその中でも相対的にリスクが高い層です。
2024年調査では、「しばしば・常に孤独を感じる」と答えた割合が20代で最も高いとされています。
ここで重要なのは、孤独が「友人が少ない」という単純な話ではないことです。
政府資料でも、孤独は主観的な感情であり、孤立は社会的なつながりや支援の欠如という別の概念として整理されています。
つまり、SNSで人とつながっていても孤独は起こり得るし、逆に表面上は学校や職場に所属していても、支援を受けられない状態は十分にあり得ます。
2. 学校との接続が切れる若者が増えています
文部科学省の2025年公表データでは、2024年度の小中学校の不登校児童生徒数は約35万4千人で過去最多、高校の不登校生徒数も約6万8千人となりました。
さらに、小中高・特別支援学校でのいじめ認知件数や重大事態も過去最多水準です。
これは「学校に行けない子が少し増えた」というレベルではありません。
学校という、もっとも基本的な社会参加の場から離れる若者が増えているということです。
もちろん、不登校そのものを直ちに問題視するべきではありません。
ただ、学校から離れたあとに別の居場所や関係先があるかどうかで、その後の孤立リスクは大きく変わります。
学校に行かないこと自体より、学校の外に受け皿がないことのほうが深刻です。
3. 「働けない」「つながれない」が生活困難に直結しやすいです
若者支援の現場では、孤独や不安がそのまま就労困難や住まいの不安定さにつながるケースが珍しくありません。
厚生労働省の資料では、ひきこもり状態にある人は15〜64歳で推計146万人、約50人に1人程度とされており、支援ニーズの掘り起こしと相談体制の整備が課題になっています。国は、相談窓口の明確化、居場所づくり、ネットワーク構築、当事者会・家族会の整備などを支援の柱に据えています。
ここから見えてくるのは、若者の困難が「気分の問題」ではなく、社会参加の接点を失うことによって生活全体が不安定化する問題だということです。
実際、民間支援でも、居場所だけではなく、住まい・仕事・伴走支援をセットで扱う動きが強まっています。
たとえば特定非営利活動法人サンカクシャ(https://www.sankakusha.or.jp/) では、居場所事業に加えて住まい支援や就労支援拠点の整備を進めています。これは、若者の課題が単発ではなく連鎖しているからです。
4. メンタル不調は「医療だけ」で解ける問題ではありません
厚生労働省の2025年版自殺対策白書では、15〜29歳の自殺者数が2020年以降3,000人を超える高い水準で推移しているとされ、特に若年女性では増加傾向が指摘されています。
この数字は重いですが、ここから単純に「カウンセリングを増やせばよい」とは言えません。
なぜなら、若者のメンタル不調は、症状だけを個別に扱っても再発しやすいからです。
近年の支援研究では、困難を抱える若者への支援として、医療や相談に加え、安心して滞在できる場、支援者との継続的な接点、本人のペースに合わせた伴走が重要だとされています。こども家庭庁の2025年調査研究でも、支援者や当事者の声を踏まえて、自治体施策のあり方を検討する必要が示されています。
つまり、支援対象は「うつ」「不安」「不登校」という症状名ではなく、
孤立を深める環境そのものへと移っているのです。
解決の糸口は、「治療」より前にある接点を増やすことです
では、何が有効なのでしょうか。
いま東京で重視されているのは、若者をいきなり制度や医療につなぐのではなく、まず“切れない接点”を持つことです。
有効性が高いと考えられているのは、主に次の3つです。
1. 相談しなくても入れる「居場所」
若者支援では、最初から相談や申請を求めない場が重要です。
来るだけでもよい、話さなくてもよい、何もしなくてもよい。そうした低ハードルの場は、支援の入り口になります。
2. 単発ではなく、継続して関われる伴走
1回話して終わる支援ではなく、数か月、時には数年単位で関係が続くことが、孤立の再発防止につながります。
若者支援においては、「解決したか」より「つながりが切れていないか」のほうが重要な指標です。
3. 学校・家庭・職場の外に第三の関係を持てること
家庭で話せない、学校にも行けない、職場でもうまくいかない。
そうしたときに、第三の関係先があるかどうかが分かれ目です。
若者支援の居場所は、この第三の接点を社会の中に増やす機能を持ちます。
東京では「若者の居場所」を地域でつくる動きが進んでいます
東京では、若者支援を行政・NPO・地域が連携して進める例も出てきています。
たとえば豊島区では、UR都市機構の建物等を活用し、若者支援団体に無償で転貸して居場所創出を進める事業が行われています。これは、行政だけでは届きにくい若者に対して、NPOと連携して受け皿をつくるモデルです。
また東京都は、若者向けの支援情報や居場所情報を検索できるポータル「若ぽた+」を運営しており、悩みや不安を抱える若者が相談先や居場所にアクセスしやすい体制整備を進めています。
つまり、東京ではすでに「若者の孤独は本人の責任ではなく、社会の接点不足の問題だ」という前提で、支援設計が動き始めています。
寄付が必要なのは、こうした支援が“採算化しにくい”からです
ここが重要です。
若者の居場所支援は、社会的には必要性が高い一方で、事業としては非常に採算化しにくい領域です。
なぜなら、
- 成果が短期で見えにくい
- 利用者1人あたりに時間がかかる
- 「来場者数」だけでは価値を測れない
- 相談・伴走・見守りに人件費がかかる
からです。
しかし、本当に必要なのはこの部分です。
居場所支援の価値は、何人が利用したかだけではなく、誰かが完全に孤立する前に支えられたかにあります。
寄付は、この「制度にも市場にも乗りにくいが、社会に不可欠な機能」を支える資金として意味があります。
まとめ
東京の若者支援が重要なのは、若者が弱いからではありません。
孤立しやすい社会構造の中で、学校・家庭・職場の外に接点を持ちにくくなっているからです。
不登校の増加、若年層の孤独感、ひきこもり支援ニーズ、自殺の高止まり。
これらは別々の問題ではなく、つながりの不足が多様な形で表れている現象として読むべきです。
だからこそ、東京で若者の居場所支援に寄付することは、単なる善意ではありません。
孤立を深刻化させないための、環境への投資です。
