【遺贈寄付とは/相続との違い】未来への贈り物を通じて社会に貢献する

遺贈寄付という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?
近年、社会貢献の一環として注目を集めているこの寄付の形態は、遺言書を通じて自分の財産を特定の団体や個人に遺贈することを指します。

相続とは異なり、法定相続人以外にも財産を譲ることができるため、社会貢献や個人の意思を尊重した資産の配分が可能です。この記事では、遺贈寄付の基本からその具体的な進め方、さらには寄贈先団体の選び方までを解説し、読者の皆さんが遺贈寄付を通じて未来に希望を託せるようサポートできればと思います。

遺贈寄付の基本的な考え方、仕組み、概念

遺贈とは?

遺贈とは、遺言書に基づいて、自身の財産の一部またはすべてを特定の個人や団体に譲ることを指します。
この仕組みは、通常の相続とは異なり、法定相続人以外にも財産を譲ることができる点が特徴です。遺贈によって財産を受け取る側を「受遺者」と呼び、受遺者は個人だけでなく、NPO法人や公益法人、学校法人などの団体も含まれます。遺贈を行うことで、亡くなった後も自分の意思や理念を社会に残し、役立てることができるのです。

遺贈と相続の違い

遺贈と相続は、どちらも亡くなった人の財産を引き継ぐという点では共通していますが、細かな部分で異なります。
相続は、法定相続人が法律に基づいて財産を受け取るものであり、遺言書がなくても自動的に発生します。しかし、遺贈は遺言書によって指定された受遺者に財産が譲渡されるため、遺言書がなければ成立しません。また、遺贈では、財産を譲る相手が法定相続人以外の個人や法人でも可能です。
さらに、遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」という2種類があり、それぞれの方法で財産の引き継ぎ方が異なります。

遺贈の種類

遺贈には、「包括遺贈」と「特定遺贈」の2つの種類があります。

  • 包括遺贈:財産の内容を特定せずに、遺産全体の一部や割合を指定して譲る方法です。例えば「自分の資産の半分をAさんに譲る」というように、具体的な財産の内容は指定せずに譲渡します。この場合、財産には負債も含まれるため、受遺者はその負債も引き継ぐことになります。
  • 特定遺贈:特定の財産を指定して譲る方法です。例えば「自宅の不動産をBさんに譲る」「預金口座の現金をC団体に寄付する」といったように、財産の内容が明確に指定されているため、受遺者はその財産のみを引き継ぎ、他の財産や負債は含まれません。

遺贈寄付の具体的な進め方、向き合い方

遺贈寄付の流れ

遺贈寄付を実現するためには、いくつかのステップを踏む必要があります。遺言書の作成から寄付の実現まで、具体的にどのような流れになるのかを以下に説明します。

  1. 相談と意思決定:まず、自分の財産をどこに遺贈したいかを決定します。この段階では、弁護士や税理士、信託銀行などの専門家に相談し、自分の意思に基づいた最適な選択をするようにしてください。
  2. 遺言書の作成:遺贈寄付を行うためには、法的に有効な遺言書を作成する必要があります。遺言書には、公正証書遺言や自筆証書遺言がありますが、内容や形式に不備があると無効になる可能性があるため、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
  3. 遺言書の保管:作成した遺言書は、信頼できる場所に保管しておくことが重要です。
    公正証書遺言は公証役場で保管され、自筆証書遺言は自宅や法務局に保管できます。遺言信託を利用することで、金融機関や弁護士が保管を代行することも可能になっています。
  4. 遺言の執行:遺言者が亡くなると、遺言執行者が遺言の内容を実行します。遺言執行者は、遺産の分割や手続き、寄付の実現を行います。遺贈寄付の場合、受遺者である団体に財産が譲渡され、寄付として活用されます。

遺言書の種類と保管方法

遺言書には、公正証書遺言と自筆証書遺言の2種類があります。
公正証書遺言は、証人2名の立ち合いのもと公証人が作成し、公証役場で保管されるため、法的な不備が少なく、安全性が高いのが特徴です。
一方、自筆証書遺言は遺言者が自筆で作成し、2020年からは法務局での保管が可能になりました。自筆証書遺言は手数料が低く抑えられるものの、形式に不備があると無効になるリスクがあるため、注意が必要です。

税金や財産処理に関する注意点

遺贈寄付を行う際には、税金や財産処理に関する注意が必要です。
遺贈寄付に伴う税金としては、相続税、不動産取得税、登録免許税などが発生する場合があります。特に、不動産を遺贈する際には相続税だけでなく、不動産取得税も考慮しなければなりません。
遺贈寄付を計画する際には、事前に税理士や専門家に相談し、税金対策を含めた計画をしっかりと立てるようにしてください。

遺留分への配慮

遺言書で遺贈を指定する際には、法定相続人の遺留分にも配慮する必要があります。
遺留分とは、法定相続人が法律上保証されている最低限の相続分のことで、遺留分を侵害するとトラブルに発展する可能性があります。例えば、遺言で全財産を特定の団体に寄付する場合、遺留分を主張される可能性があるため、遺言書の内容に慎重を期す必要があります。
また、付言事項を利用し、遺言書に自分の意思や理由を記載することで、遺族や関係者の理解を得やすくすることができます。

3. 寄贈先団体の選び方

寄贈先団体の特徴

遺贈寄付を受け入れている非営利団体には、それぞれ特色があります。以下にいくつかの主要な団体の特徴を紹介します。

  • 日本赤十字社:災害救護や医療支援を目的とした遺贈寄付を受け付けています。寄付された財産は、日本国内外の人道支援活動に使用され、相続税の免除措置も適用されます。
  • 国連UNHCR協会:難民支援活動を展開しており、遺贈寄付を通じて国際的な難民救援活動に貢献できます。こちらも寄付財産には相続税がかからないため、税制面でのメリットもあります。
  • 日本自然保護協会:自然保護を目的とした遺贈寄付を受け付けており、環境保護に関心がある方に適した寄付先です。寄付された財産は、日本国内の自然保護活動に役立てられます。

これらの団体は、遺贈寄付を推進するために、弁護士や信託銀行などの専門家と提携しており、遺言書作成から寄付の実現までのサポートを行っています。
遺贈寄付を検討する際には、団体の活動内容やサポート体制をよく調べ、自分の理念に合った団体を選ぶことが大切です。

注意点とまとめ

遺贈寄付の準備の重要性

遺贈寄付を成功させるためには、準備が不可欠です。
遺言書の作成はもちろんのこと、法的な有効性を確保するために専門家の助言を受けるようにしましょう。
また、遺留分に配慮しつつ、遺言書に寄付の理由や背景を記載することでトラブルを防ぐことができます。さらに、寄付先団体との事前のコミュニケーションも欠かせません。寄付財産の管理や処理方法についても、事前に確認しておくことがトラブル回避につながります。


遺贈寄付の未来への可能性

遺贈寄付は、亡くなった後も自分の思いを未来に託し、社会貢献ができる素晴らしい仕組みです。しかし、日本ではまだ遺贈寄付の認知度が低いのが現状です。
遺贈寄付を通じて、社会に自分の足跡を残すことができるという考え方が広がれば、社会全体に大きな影響を与える可能性があります。

特に、若い世代がこのような遺贈寄付に関心を持ち、自分の財産を社会に還元する意識が高まることで、社会全体がより良い方向に進むのではないでしょうか。
遺贈寄付は、自分の死後に社会貢献ができる一方で、現在の生活に影響を与えないという点でも、未来への投資として非常に魅力的です。私たちは、遺贈寄付を一つの選択肢として考え、より豊かな社会を次世代に引き継ぐための行動を今から始めることが求められているのかもしれません。

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投稿者: FIRST DONATE編集長 髙崎

非営利団体のファンドレイジング/広報支援を生業とするDO DASH JAPAN株式会社スタッフであり、FIRST DONATE編集長。 自身の体験を元に、寄付やソーシャルグッドな情報収集/記事制作を得意とする。