【寄付はなぜ幸福を】もたらすのか?科学的根拠とその実態

2011年に東北地方を襲った未曾有の大震災をきっかけに、日常生活の中でも「寄付」や「社会貢献」という言葉を耳にすることが増えてきました。
しかし、寄付を行うことでどれほどの幸福感を得られるか、またそれが本当に自分にメリットをもたらすかについて考えたことがあるでしょうか?

多くの人は寄付を他者のための行為と捉えていますが、実は寄付者自身にも多大な恩恵をもたらすことが科学的に証明されています。
今回は、寄付がどのように幸福感を高めるのか、具体的な根拠やデータをもとに解説していきます。また、寄付をする動機や、寄付金額の適切な考え方についても掘り下げ、筆者自身の視点からも寄付文化の重要性についても触れてみたいと思います。


なぜ寄付をすると幸福になれるのか?

寄付による心理的効果

寄付を行うことで幸福感が高まる理由の一つに、「他者に貢献することが自己満足を高める」という心理的効果が挙げられます。
これは、寄付を通じて他者に役立つという感覚が、私たちにポジティブな感情をもたらすためです。心理学の研究では、他者のために時間やお金を使うことが、自分のために使うよりも強い満足感や幸福感をもたらすことが確認されています。

この背景には、「自分が社会の一部として機能している」という実感が幸福感に直結している点があります。
たとえば、地元のNPOに寄付をすることで、その地域の人々が助けられたり、新しいプロジェクトが開始されたりするのを目にすることができるでしょう。このように、目に見える形で他者に貢献できると感じることが、私たちの心に大きな充実感をもたらします。

さらに、寄付を通じて得られる「自己効力感」も重要です。
自己効力感とは、自分の行動が有意義であり、結果を生み出すと感じられる感覚のことです。
寄付はその一例で、誰かの助けになるという実感が得られると、自己効力感が高まり、自己評価も向上します。これが寄付行動を促進し、長期的な幸福感を高める一因となっているのです。

社会的貢献と自己評価の向上

寄付をすることで他者や社会に良い影響を与えるということは、個人の自己評価や社会的評価の向上にも繋がります。
特に職場やコミュニティにおいて、「あの人は社会に貢献している」という評価が高まることで、寄付者は自分自身を肯定的に見ることができるようになります。
社会貢献が個人の評判を高める要素となることで、結果的に寄付者自身も幸福感を感じることができます。

これにより、寄付は「他者のため」だけでなく、「自分のため」でもあると理解できるようになります。つまり、寄付を通じて得られる満足感や幸福感は、単に道徳的な行動の結果として生まれるのではなく、個人の内面に深く関わるものなのです。


寄付(利他的な行為)が幸福をもたらすことがわかる実験やデータ

Dunnらの実験による証拠

寄付が幸福をもたらすという考え方は、単なる感覚や経験談に留まりません。
心理学者エリザベス・ダンらが行った実験では、他者にお金を使うことが自己の幸福感を大きく高めることが示されました。
この実験は、参加者にそれぞれ5ドルまたは20ドルを与え、使い道を2つのグループに分けて指示しました。一方のグループには「自分自身のため」にお金を使うように、もう一方のグループには「他者のため」にお金を使うように指示しました。

結果として、他者のためにお金を使ったグループは、自己のために使ったグループよりも明らかに高い幸福感を報告しました。特に興味深いのは、この結果が所得水準に関わらず同様に見られた点です。カナダのような高所得国だけでなく、ウガンダのような低所得国でも同様の傾向が確認されており、他者に対する投資が幸福感を高める普遍的な要因であることがわかりました。

健康への効果

寄付の効果は、単にその瞬間の幸福感に留まりません。
長期的な健康状態の改善にも寄付が寄与することがわかっています。米国の研究では、定期的に寄付を行っているグループは、寄付を行わないグループに比べて精神的および身体的健康が良好であることが確認されています。

寄付が健康に良い影響を与える理由は、ポジティブな感情がストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制するためです。
ストレスが軽減されることで、寄付者の免疫機能が改善し、身体的な健康にも良い影響がもたらされるのです。また、寄付を通じて得られる自己満足感が、心の健康をサポートし、うつ症状の軽減や幸福感の持続にも繋がることが示されています。


寄付の動機を詳細に分析

利他的動機と利己的動機のバランス

寄付の動機には、大きく分けて利他的動機利己的動機の2つが存在します。
利他的な動機とは、困っている人を助けたいという純粋な思いからくるものです。例えば、自然災害の被災者や貧困に苦しむ人々への支援を行う場合、その動機の多くは他者を助けたいという利他的なものです。しかし一方で、寄付者が「社会的に良い人と思われたい」「自分のイメージを向上させたい」という利己的な理由も存在します。

この利己的な動機がネガティブなものとして捉えられることもありますが、実際には利他的動機と利己的動機は共存し、互いに寄付行動を促進します。
重要なのは、どちらの動機も寄付者自身に幸福感をもたらすという点です。つまり、他者を助けるための行為が、自分自身の幸福感向上に繋がるのです。

社会的期待とコミュニティとのつながり

日本においては、寄付の動機として地域社会やコミュニティとのつながりが強く影響しています。
たとえば、町内会や自治会での活動の一環として寄付を行うことが一般的です。このような地域社会への貢献は、寄付者が「自分は社会の一員である」と感じる機会を提供し、そのことが寄付行為を促進します。

また、寄付を通じて地域の人々や団体とのつながりが深まることも、寄付者にとっての大きなメリットです。
地元の活動に参加することで新たな人間関係が生まれ、それがコミュニティの発展に貢献し、自分自身の幸福感を高める要因となります。


寄付金額の考え方について

年収の1%を寄付に回す考え方

寄付をする際に、どのくらいの金額を寄付するべきか迷うことは多いかもしれません。一般的に、年収の1%を寄付に回すという考え方が推奨されています。
これは無理のない範囲で寄付を行いながら、社会に大きな影響を与えるためのバランスの取れた指針です。

このアプローチは、寄付をする際に金額が問題になることなく、持続可能な社会貢献を行うために有効です。
たとえ少額であっても、定期的に寄付を行うことで、寄付者は長期的に社会に貢献しているという充実感を得られます。

少額でも定期的な寄付の重要性

寄付を行う際の金額の大小は重要ではありません。少額でも定期的に寄付を続けることが、寄付者にとっても社会にとっても大きな意味を持ちます
少額の寄付でも、持続的に行われることで社会に大きな影響を与え、結果として寄付者も「自分は長期的に社会に貢献している」という達成感を得ることができます。

また、定期的な寄付は、寄付者自身に対してもポジティブな効果をもたらします。寄付を継続することで、寄付者は自分自身の行動が社会に対して大きな影響を与えていると感じ、幸福感が持続します。短期的な寄付行為ではなく、長期的な寄付の継続が、より大きな充実感を生むのです。


寄付を通じて作られる「新しいつながり」

これまでのデータや研究結果に加えて、筆者自身が注目したいのは、寄付を通じて生まれる「新しいつながり」です。
寄付をするという行為は、他者へのサポートだけでなく、自分と社会を結びつける新しいつながりを生む重要な手段です。

たとえば、特定のNPOやプロジェクトに寄付をすることで、その団体との関係が深まり、寄付者がその団体の活動を応援し続けるだけでなく、新たな活動に参加したり、他の寄付者とつながりを持ったりすることができます。
このような「コミュニティ」の感覚が、寄付者にとってさらに大きな幸福感をもたらすのです。

寄付は単なる一方向の行為ではなく、社会全体と個人との間に生まれる双方向のつながりを形成する行動です。このつながりを感じることで、寄付者自身も「自分の行動が社会を変えている」という感覚を持つことができ、これがさらなる寄付行動を促進する循環を生むのではないでしょうか。


まとめ

寄付が幸福をもたらす理由は、多くの研究やデータからも明らかです。
他者を助けることで得られる自己満足感や社会的評価の向上、さらに健康への良い影響まで、寄付は寄付者自身に多くのメリットを提供します。少額でも定期的に寄付を続けることが、社会に対する大きな貢献に繋がり、寄付者にとっても持続的な幸福感をもたらすのです。

また、寄付は他者との新しいつながりを生み出す行為でもあります。自分一人の行動が社会に影響を与え、そのつながりを感じることで、寄付者はさらなる満足感を得るでしょう。寄付という行動があなたにとっても新たな幸福をもたらすことを願っています。
それでは、また。

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投稿者: FIRST DONATE編集長 髙崎

非営利団体のファンドレイジング/広報支援を生業とするDO DASH JAPAN株式会社スタッフであり、FIRST DONATE編集長。 自身の体験を元に、寄付やソーシャルグッドな情報収集/記事制作を得意とする。