悲しいことに、この日本では毎年数万頭の犬や猫が殺処分されています。
この現実は、ペットを飼う際の責任感の欠如や、社会全体のペットに対する認識が十分でないことに由来するのかもしれません。
殺処分は、単なる動物の「処分」ではなく、私たち一人ひとりが考えるべき重大な社会問題です。この記事では、犬猫の殺処分の背景と現状、そしてそれを防ぐための対策と支援のあり方を掘り下げ、どのように関わるべきかを考えます。
目次
犬・猫の殺処分の背景
飼い主と飼育の現状
犬や猫を「可愛い」という一時的な感情で飼い始め、その後、経済的な理由や生活の変化で飼い続けられなくなるケースが多く見られます。
特に、引越しや病気、飼い主の高齢化が理由で保健所に持ち込まれることが頻繁にあります。このような飼い主の無責任な行動は、結果として多くの犬や猫を保健所へ送り込み、その多くが殺処分の対象になってしまいます。
近年では高齢者がペットを飼うケースが増加していますが、これはペットが高齢者の孤独を癒やす存在として注目されているためです。しかし、飼い主の健康状態が悪化したり、入院や死亡などで世話ができなくなることが増えており、このような場合も保健所への引取りが行われます。
社会的な要因
飼い主による飼育放棄以外にも、社会的要因が殺処分を招いています。所有者不明の犬や猫が迷子になったり、無責任に捨てられるケースが多く、保健所に引き取られる犬猫の約88%が所有者不明であるというデータがあります。
特に野良猫や野犬は、管理が行き届かない環境で繁殖し続け、保健所に収容されても譲渡先が見つからないため殺処分されることが多いのです。
四国や九州地方では、温暖な気候や河川敷、雑木林が野犬の生息を助長し、特に問題視されていました。こうした地域では、譲渡が困難なため、野犬が保健所に持ち込まれた後、殺処分に至るケースが非常に高いのが現実です。
殺処分の現状
統計データと殺処分数の推移
令和4年度の統計によると、日本全国で約2,434頭の犬、約9,472頭の猫が殺処分されています。
これは一日あたり6.6頭の犬と26頭の猫が殺処分されている計算になります。
また、過去10年間で殺処分数は大幅に減少しており、2010年代前半には年間約20万頭の殺処分が行われていたことを考えると、現在の数字は大きく改善されているといえます。
殺処分の原因と方法
殺処分が行われる理由としては、大きく以下の3つが挙げられます。
- 負傷や病気による苦痛が著しく、治療が困難な場合
- 人や他の動物に危害を加える恐れがある攻撃性のある動物
- 引取先が見つからない場合や施設の収容制限によるもの
特に、負傷した動物や攻撃性の強い動物は、譲渡が非常に難しく、結果として殺処分の対象になりやすいのです。
また、収容期間中に病気や事故で亡くなるケースもあり、この場合は自然死として処理されますが、実質的には殺処分と同様に扱われることもあります。
殺処分の方法としては、炭酸ガスによる窒息死や麻酔薬の投与による安楽死が多くの自治体で採用されています。炭酸ガスはコスト面で優れているため選ばれることが多いですが、動物に苦痛を与えるリスクがあり、改善が求められる分野です。
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殺処分を減らすための対策
行政と民間団体の協力
殺処分数を減少させるためには、行政と民間団体の協力が欠かせません。
たとえば、神奈川県や岡山市では動物保護団体と協力して譲渡活動を活発に行い、殺処分ゼロを目指しています。
神奈川県では、10年以上にわたり犬の殺処分ゼロを達成しています。この成功の鍵は、行政が積極的に動物愛護団体と連携し、譲渡会を開催していることです。
「全国の犬・猫の返還・譲渡数の推移」を見ると、近年犬・猫の返還および譲渡の数が徐々に増加していることがわかります。
特に、保護された犬や猫が所有者に返還されるケースや、新しい飼い主に譲渡される割合が増えており、動物愛護団体や自治体の譲渡活動の活性化が大きく影響しています。
返還や譲渡の増加は、飼い主の意識向上やペットの終生飼養への理解が進んだこと、さらに譲渡会やSNSを通じた新しい飼い主探しが活発化していることが理由と考えられます。
技術的な解決策
殺処分を減らすためには、技術的なソリューションも有効です。
たとえば、マイクロチップの普及が進み、迷子になったペットがすぐに飼い主に返還されるケースが増えています。また、Bluetooth技術を活用したペット追跡デバイスも登場し、ペットの行方不明を防ぐためのツールとして期待されているようです。
社会啓発と教育
飼い主に対する啓発活動も重要な役割を果たします。
無責任にペットを手放すことを防ぐため、終生飼養(ペットの一生を最後まで見守ること)の意識を広める活動が求められています。特に、ペットを飼う前にその責任をしっかりと理解させるための教育やキャンペーンが必要なのです。
寄付や支援活動
動物愛護団体の活動は、殺処分を減らすための重要な支援先です。
ピースワンコ・ジャパンは、全国で捨て犬や迷子犬の保護と譲渡を行い、殺処分ゼロを目指しています。
東京キャットガーディアンは、猫の殺処分を減らすために「猫付きマンション」や「保護猫カフェ」などユニークな取り組みを行っています。こうした団体は、寄付やボランティアの参加を募り、活動を支えています。
ボランティアの参加と寄付の重要性
動物保護活動に貢献するための方法は多岐にわたりますが、寄付やボランティアは最も直接的な支援手段です。
月に1,000円程度の寄付で、保護された犬や猫の医療費や食費を支えることができますし、ボランティア活動としては、譲渡会の手伝いや保護施設での動物の世話など、個々のスキルや時間に応じた貢献が可能です。
まとめ
犬や猫の殺処分を減らすためには、行政、民間、そして私たち一人ひとりが協力する必要があります。この記事を通じて、犬猫の殺処分問題の現状を理解し、寄付やボランティアを通じて貢献することの重要性がお分かりいただけたかと思います。
また、ペット飼育は単なる「個人の楽しみ」から「社会の責任」へと変わっていくべきだと私たちは考えています。
ペットを飼うことは、その命を預かる責任でもあります。技術の進歩や法整備が進む中で、飼い主としての責任を持つことがこれまで以上に重要になるはずです。将来的には、ペットの飼育許可にライセンス制を導入するなど、飼い主の責任を強化する仕組みが必要ではないでしょうか?
人間の勝手な都合によって左右されてしまう命たちが、私たちができる小さなアクションで未来の命を救う大きな一歩となることを祈っています。
キフコのワンポイントコメント
世界には、犬や猫の殺処分を減らすために、さまざまな取り組みを行っている国があります。
ペットの保護や譲渡活動が進んでいる国の一つとして、ドイツが有名です。ドイツでは、「ティアハイム」と呼ばれる動物保護施設が全国にあり、ここで保護された犬や猫は、新しい飼い主が見つかるまで大切にお世話されます。ドイツの法律では、健康な犬や猫を安易に殺処分することは法律で禁じられており、動物の命がとても大切にされているんです。
もう一つの例は、アメリカのカリフォルニア州。ここでは、「ノーキルシェルター」と呼ばれる殺処分を行わない保護施設が増えています。このような施設は、動物の里親を見つける活動に力を入れ、なるべく多くの犬や猫が新しい家族と出会えるように工夫しています。
日本でもこうした海外の成功事例を学びながら、犬や猫の殺処分を減らすために動物保護団体が活動を強化していきたいところですよね。
殺処分ゼロを目指すためには、動物を大切にする心や、ペットを最後までしっかりと世話する責任感がとっても大事だと思います。