近年、ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待の問題が多くの人の関心を集めています。家庭内での暴力に苦しむ女性や子どもが一時的に避難する場所として、女性シェルターが重要な役割を果たしています。
しかし、シェルターの存在や利用についての情報はまだまだ社会に広がっていないのが現状です。
今回は、支援を検討している皆さんに向けて、女性シェルターの役割や運営、そして支援の方法について詳しく解説します。
目次
女性シェルターの概要と役割
民間シェルターと公的シェルターの違い
女性シェルターには、大きく分けて民間シェルターと公的シェルターの2種類があります。
公的シェルターは地方自治体が運営し、利用者の保護やカウンセリングを行いますが、滞在期間が限られており、通常2週間程度しか利用できません。
一方、民間シェルターはNPO法人やボランティア団体によって運営されており、柔軟で個別の対応が可能です。例えば、滞在期間が公的シェルターより長く、個別の支援プログラムも多岐にわたります。
シェルターの所在地は安全のために非公開であり、加害者からの追跡を防ぐための厳しいプライバシー管理が行われています。これは、支援者が寄付やボランティア活動を通じて間接的に関わる場合にも、常に頭に入れておくべきポイントです。
シェルターの具体的な利用方法
シェルターを利用するためには、まず公的機関の相談窓口やDV相談センターに連絡する必要があります。直接シェルターに問い合わせることはできないため、自治体や警察を通じて手続きが進められます。
利用者には、現金や重要な書類、健康保険証など、避難生活に必要な物をあらかじめ準備しておくことが推奨されています。こうした点を知ることで、支援者としても利用者が何を求めているのかを理解しやすくなります。
女性シェルターの利用実態
2019年の内閣府の調査によると、民間シェルターを利用した女性は3,414人にのぼり、そのうち94.1%が女性でした。
入所理由として最も多いのが「配偶者からの暴力」で、全体の52.3%を占めています。つまり、女性シェルターは主にDV被害を受けた女性が利用していることがわかります。また、子ども連れの母親も多く、子どもの安全も守らなければならない重要な施設であることが浮き彫りになります。
女性シェルターの種類と役割
DVシェルター
DVシェルターは、配偶者やパートナーからの暴力から逃れたい女性のための緊急避難場所です。
民間シェルターの中でも最も広く知られており、日本国内に約120箇所あります。施設の所在地は非公開で、滞在期間は数週間から数ヶ月と、個々の状況に応じた対応がなされています。
若年女性支援シェルター
最近では、パートナーからの暴力ではなく、家庭や職場でのトラブルに苦しむ若年女性を対象としたシェルターも増加しています。
これらのシェルターは、家庭環境が悪化した若者が一時的に避難できる場所として機能しており、生活支援や自立のためのサポートも提供しています。
ホームレス支援シェルター
さらに、住居を失った女性や子どもを支援するためのホームレス支援シェルターも存在します。
これらの施設は、単なる避難所ではなく、次のステップに進むためのサポートが充実している点が特徴です。生活保護や就労支援を通じて、社会復帰を目指す利用者が多いのです。
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女性シェルターのメリットとデメリット
メリット
女性シェルターの最大のメリットは、柔軟な支援が可能な点です。
公的シェルターでは定型化された支援しか提供できませんが、民間シェルターでは個々のニーズに応じた対応が行われます。例えば、DV被害者に対して長期的な自立支援や退所後のケアが行われることも多く、被害者が安心して新しい生活を始めるための土台を築く手助けをしています。
デメリット
一方で、民間シェルターには財政面の不安定さという問題があります。
シェルターの多くは寄付や助成金に頼って運営されており、常に資金が不足している状態です。さらに、ボランティアベースで活動しているため、スタッフの人手が不足するケースも珍しくありません。このような状況を改善するためには、支援者からの継続的なサポートが不可欠です。
女性シェルターを支援する方法
金銭的な支援
シェルターの運営にとって、寄付は非常に重要です。
施設の維持や利用者への支援に必要な費用は、ほとんどが寄付金に依存しています。特に、長期的な支援を行っているシェルターでは、被害者が自立するまでの期間が長くなるため、その間の生活費やカウンセリング費用なども必要となります。
物品の寄付
金銭以外にも、衣類や日用品の寄付は大きな助けになります。
多くの利用者が逃げてくる際に必要なものを持ち出せずにいるため、衣類や食料品、生活必需品が常に不足しています。フードバンクや地域の寄付プログラムを活用して、支援物資を集めることも可能です。
ボランティア活動
直接的な支援としては、ボランティア活動も有効です。
特に子どもが多くいるシェルターでは、学習支援や心理的サポートが求められているため、定期的な訪問や、長期にわたるボランティア活動を通じて、利用者の生活を支える役割を果たすことができます。また、シェルターの維持管理や清掃なども大切なボランティア活動の一環です。
ボランティアや支援が可能な団体
特定非営利活動法人 全国女性シェルターネット
概要
全国女性シェルターネットは、DVや性暴力の被害に遭った女性と子どもを支援するための民間シェルターの全国ネットワークです。
1998年に設立され、現在65の団体が加盟。このネットワークは、被害者支援や政策提言を行うとともに、各地域のシェルターと連携して支援を行っています。
支援方法
- 寄付:運営資金やシェルターに必要な物資を寄付できます。
- ボランティア:直接支援としてシェルターでのサポート活動や、イベントの運営に参加することができます。
- イベント参加:全国女性シェルターネットが主催するシンポジウムなどに参加し、シェルター支援について学ぶことができます。
認定NPO法人ウィメンズネット・こうべ
概要
ウィメンズネット・こうべは、兵庫県を中心に活動する女性支援団体で、主にDV被害を受けた女性のためのシェルター運営や相談業務を行っています。また、法律相談や就労支援なども提供し、女性の自立をサポートしています。
支援方法
- 物品寄付:衣類、生活用品、食品などを寄付できます。
- ボランティア:相談業務やシェルター運営を支えるボランティア活動が可能です。
- 寄付:運営資金の寄付を受け付けています。特に、被害者の自立支援に使用されます。
認定NPO法人自立生活サポートセンター もやい
概要
DV被害者や虐待被害者を支援する団体です。シェルターの運営や一時保護の提供に加え、生活支援や就労支援プログラムを通じて、被害者が新しい生活を始められるようサポートしています。
支援方法
- 寄付:シェルターの運営資金や、被害者支援プログラムへの寄付を募集しています。
- ボランティア:相談業務や、シェルターでの生活支援、また就労支援プログラムに参加することが可能です。
- イベント参加:啓発活動のためのイベントに参加し、DV問題に関する理解を深めることができます。
困難女性支援法と今後の展望
2022年に可決された困難女性支援法は、シェルター運営に大きな影響を与えました。
この法律により、女性シェルターの運営体制が強化され、女性や子どもに対する支援がより一層充実していくことが期待されています。
2024年には公的シェルターの名称が「女性自立支援施設」に変更されるなど、今後も法的な支援体制が進化していくでしょう。
シェルター支援の課題と地域格差
シェルターの設置状況には地域間格差が存在していることが多く、特に地方では、シェルターの数が限られており、利用者が遠方まで移動しなければならないケースもあります。このような状況を改善するためには、地域ごとの支援体制の強化が求められます。地方自治体が積極的にシェルター支援を行うことで、全国的な支援の平等化が図れるでしょう。
退所後のサポートとステップハウス
シェルターを出た後も、生活基盤を整えるためのサポートが欠かせません。
ステップハウスと呼ばれる中期的な保護施設では、数カ月から1年程度の滞在が可能で、就労支援や生活保護の申請などを受けながら自立を目指すことができます。
シェルターを利用することで、短期間の避難だけでなく、長期的なサポートを受ける道筋が用意されている点を強調するべきです。
キフコのワンポイントコメント
ここで、私自身の視点を一つ提案したいと思います。
それは、「シェルターを地域コミュニティ全体で支援する」ことの重要性です。シェルターの運営は限られた資源やスタッフによって行われており、常に人手や資金が不足しています。この状況を解決するために、地元の企業や市民団体、さらには個人レベルでの関わりが重要だと思います。
たとえば、シェルターの隣接地域での募金活動、学校や職場を通じた啓発活動などが考えられますよね。
地域コミュニティ全体がシェルターの存在を理解し、支援することで、より多くの女性や子どもたちが安心して避難できる場所が増えるのではないでしょうか。
まとめ
女性シェルターは、家庭内での暴力に苦しむ女性や子どもたちにとって、重要なセーフティーネットです。
しかし、その運営は限られた資源に依存しており、支援が不足しています。今回ご紹介したように、私たち一人ひとりができることは多くあります。
寄付やボランティア活動、物品の寄付などを通じて、今後も多くの支援が不可欠です。
シェルターの役割を理解し、地域社会全体でその存在を支えていくことが、真の支援につながることを願っています。