アフガニスタン東部の小さな村。
朝の光のなかで、少女マリヤム(仮名)は教科書を胸に抱え、学校へ向かっていました。
読み書きができるようになったことで、
「いつか看護師になりたい」という夢を語るのが彼女の日課でした。
しかし、ある日突然、学校の門の前で彼女は立ち止まります。
「女の子はこれ以上、学校へ通うことはできません」
その日、教室から女の子の姿は消えました。
マリヤムの夢も、ノートの上で止まったままでした。
これは遠い国の出来事のように聞こえるかもしれません。
けれど、いまアフガニスタンでは、
数百万人もの少女が“教育”という当たり前を奪われたまま 生活しています。
今回は、「アフガニスタンの子ども」「女子教育」「貧困」「支援」
に焦点をあて、その現状と背景、そして私たちが知るべきことを深く掘り下げます。
目次
■ アフガニスタンとはどんな国か
1. 基礎データと社会背景
アフガニスタンは、南アジアと中東の交わる地域に位置し、
長年にわたる紛争と政治的混乱のなかにあります。
- 人口:約4,000万人(うち子どもは約半数)
- 世界最貧国のひとつ(GDPは極めて低い水準)
- 医療・教育・福祉が慢性的に不足
特に2021年以降、政権交代によって国内の状況は急激に変化し、
国際社会からの支援も縮小したことで、
子どもや女性が最も深刻な影響を受けています。
■ 女子教育の禁止——世界で最も深刻な「教育危機」
2. 女の子が学校に行けないという現実
アフガニスタンでは、政権交代後に
中学校・高校・大学への女子の通学が段階的に禁止 されました。
- 約120万人の女の子が学校へ通えない状態
- 世界で唯一、“女性の教育を制度的に禁止している国”
教育とは、ただ読み書きを学ぶだけではありません。
「自由」「尊厳」「未来を選ぶ力」を身につける行為そのものです。
しかし、アフガニスタンではその「当たり前」が消えています。
3. 女の子だけが閉じ込められる社会構造
女子教育禁止は、以下の深刻な問題と直結します。
● ① 児童婚の増加
学校へ通えない → 家にいる → 「結婚させるべき」という社会圧力
結果として、10代前半での結婚が増える傾向 にあります。
● ② 女性の就業率の低下
女性が働ける場所が極端に制限され、「経済的自立」が完全に閉ざされる。
● ③ 貧困の世代間連鎖
教育がない → 働けない → 貧困が続く → 子どもも教育を受けられない
という悪循環が固定化してしまいます。
● ④ 社会そのものの停滞
女性の教育は国家の成長にも不可欠です。
教育が失われるほど、国全体の未来も閉ざされます。

■ 子どもたちが直面しているその他の危機
アフガニスタンの子どもたちは、教育以外にも多くの問題を抱えています。
4. 極度の貧困と栄養不良
- 国民の約9割が十分な食料を得られない生活
- 子どもの栄養不良率は世界最悪レベル
干ばつや家計の崩壊によって、多くの家庭が
「今日は何も食べられない」
という状態を日常的に経験しています。
5. 医療へのアクセス不足
- 医師不足
- 病院の閉鎖
- 医薬品不足
特に妊産婦や新生児ケアは壊滅的で、
本来なら助かる命が失われている状況 が続いています。
6. 紛争・爆発物の脅威
毎年、子どもが地雷や不発弾で命を落とす事故が後を絶ちません。
■ 国際社会はどんな支援をしているのか
アフガニスタンは、世界のなかでも
最も国際支援に依存している国のひとつ です。
国際機関やNGOは、主に以下の支援を行っています。
- 女子教育の代替プログラム(オンライン教育・自宅教室など)
- 学校給食・栄養支援
- 医療支援(移動診療所・母子保健)
- 地雷除去支援
- 緊急食糧支援
- 冬期の防寒具・避難支援
ただし、政情不安が続く中で支援活動が制限されることも多く、
状況は常に不安定です。
■ 日本からできること
アフガニスタンの問題はとても大きく、一人で解決できるものではありません。
しかし、「知ること」「関心を持ち続けること」も立派な支援です。
日本からできる支援としては:
- 女子教育支援(教材・教師育成・非公式教育)
- 栄養支援・学校給食
- 地雷除去・安全教育
- 難民支援
- 医療支援(母子保健)
など、長く継続することが必要な領域が多くあります。

■ おわりに——少女たちの未来を閉ざさないために
学校の門の前で立ち止まった少女マリヤム。
彼女が再び教室に戻れる日は、まだ見えていません。
けれど、もし世界のどこかで
「女の子も教育を受けるべきだ」
「子どもの未来を奪ってはいけない」
と願う人がひとりでも増えれば、それは確かな変化へとつながります。
アフガニスタンの子どもたちが抱える困難は大きいですが、
その一歩を支える力は、世界中の人の“知る”という行為から始まります。
少女たちの未来が閉ざされないように。
教育を受けたくても受けられない子どもたちの声が、
届かないまま消えてしまわないように。
私たちは、知り続け、考え続けることができます。
