日本には、親と暮らすことが難しい子どもたちが数多くいます。
その多くは、虐待や育児放棄、家庭の経済的困難、親の病気や死亡といった理由で、家庭での生活が困難になり、児童養護施設に入所しています。こうした施設では、子どもたちが健全に成長できる環境を提供するために日々支援が行われていますが、施設の運営には公的な資金だけでなく、一般の人々からの寄付や支援が不可欠です。
今回は、児童養護施設での生活や運営の実態、寄付の方法や寄付が何に使われているかなどについて詳しくご紹介し、皆さんができる具体的な支援の手段についてもご提案したいと思います。寄付を通じて私たちも日本の子どもたちの未来に貢献できるかもしれません。
ぜひ、最後までお読みいただき、支援について考えてみてください。
目次
孤児院・児童養護施設の役割と現状
児童養護施設とは?
まず知っておきたいのは、”孤児院“という名称は日本ではすでに廃止され、すべての施設が「児童養護施設」として運営されている点です。
この施設には、親の元での生活が難しい子どもたちが暮らしており、その理由は虐待、育児放棄、親の経済的問題、または親の病気や死亡と多岐にわたります。こうした施設では、子どもたちの安全を確保するだけでなく、教育、生活指導、心理的ケア、自立支援といった幅広い役割を担っています。
施設の目的は、単に子どもたちを保護することだけではなく、彼らが将来的に社会で自立して生きていけるように成長をサポートすることです。
例えば教育面では、学校での勉強だけでなく、家庭生活で学べない生活スキルを身につけるための指導も行われています。食事の準備やお金の使い方、時間管理など、一般的な家庭では自然に学べることを、施設の中で経験しながら学ぶ機会が提供されています。
子どもたちの背景
児童養護施設に入所する子どもたちは、多くの場合、虐待やネグレクト(育児放棄)などの深刻な家庭問題を経験しています。
特に虐待を受けて施設に保護された子どもたちは、心に大きな傷を抱えており、心理的なケアがとても大切です。
施設のスタッフたちは、こうした子どもたちが安全で安心できる環境の中で生活できるように努めていますが、すべての子どもたちに分け隔てなく心理的なサポートを十分に行うには限界があり、時には外部の専門家による支援も求められているのが現状です。
また、18歳になるとほとんどの子どもたちは施設を退所し、自立生活を始める必要があります。しかし多くの場合、退所後の進学や就職、家賃や生活費の負担といった現実的な問題には、親の経済的支援が得られない状況では、保証人の問題や就職先の選択肢が限られることも多く、一筋縄ではいかないのです。
退所後の支援が不十分な場合は、どうしても社会の中で孤立してしまい、場合によってはホームレスになるリスクも存在します。ですから施設を退所した後の支援も含め、長期的なサポートが不可欠です。
施設運営の資金源と寄付の重要性
措置費とその限界
児童養護施設の運営費の多くは、「措置費」と呼ばれる国や自治体からの公的な資金で賄われています。
この措置費は、子どもたちの日常生活に必要な経費(食事、衣服、教育など)や、施設職員の人件費、施設の維持管理費などに使われますが、措置費だけでは施設のすべてのニーズを満たすことは難しいのが現実です。
例えば、子どもたちが使う家電製品が故障した場合や、施設の建物に修繕が必要になった際には、措置費だけではカバーしきれないことがあります。また、施設によっては、国や自治体からの資金提供に差があり、特に地方の施設では、資金不足が慢性的な課題となっています。
寄付の役割
このような状況を補うために、一般の人々からの寄付が非常に重要な役割を果たしています。
寄付金は、施設の運営費を補完し、子どもたちの生活環境を向上させるために使われています。新しい学習教材の購入やレクリエーション活動に必要な資金、卒業を迎える子どもたちへの支援など、非常に多岐にわたる用途で寄付が活用されています。
このため、お金の寄付だけでなく、物による寄付もとてもありがたい支援の一つです。家電製品や消耗品、子ども用の衣服や靴など、日常的に使用する物品の寄付は、施設の経済的負担を軽減するだけでなく、子どもたちに直接喜ばれる支援となります。
寄付できる物品とその注意点
寄付できる物品について
寄付できる物品は様々ですが、特に必要とされているのは以下のようなものとのこと。
- 衣類や靴
子どもたちは成長が早いため、衣類や靴は常に不足しています。新品でなくとも、きれいな状態のものであれば喜ばれます。 - おもちゃや本
情緒的な成長を助けるため、年齢に合ったおもちゃや絵本、学習教材なども重要な寄付物品です。 - 小型家電
炊飯器や掃除機、電子レンジなどの小型家電は、施設の日常生活で必需品となります。さらには子どもたちが退所後に一人暮らしを始める際にも必要です。 - 文房具や消耗品
ペンやノート、洗濯用洗剤、シャンプー、タオルなど、日々使う消耗品はいつでも必要とされています。
寄付の際の注意点
物品を寄付する際にはいくつかの注意点があります。
まず、施設ごとに必要な物品が異なるため、事前に施設に問い合わせたり、ホームページをチャックするなどして、何が必要かを確認するようにしましょう。例えば、ある施設では衣類が不足していても、他の施設では日用品が必要とされている場合もあります。
また、基本的には匿名での寄付は避けたほうがよいでしょう。
施設側が誰からの寄付か分からないとトラブルが発生する可能性がありますし、もし衛生状態の悪いものや壊れているものが送られてきてしまった場合、返送ができないため、施設に逆に負担がかかることがあります。
さらに、寄付する物品は清潔で安全なものでなければなりません。特に子どもたちが使うものですので、衛生面や安全性には十分な配慮が必要です。
退所後の支援の必要性
退所後に直面する課題
児童養護施設で生活する子どもたちは、18歳になると施設を退所し、自立した生活を始めなければなりません。
しかし、彼らが直面する社会の現実は想像以上に厳しいものです。まず、進学や就職において経済的な支援がないため、学費や生活費を自力で工面する必要があります。
また、家を借りる際に必要な保証人の問題もあります。多くの子どもたちは親とのつながりが薄いため保証人を確保することが難しく、結果として安定した住居を得られないケースもあります。このような問題に直面した子どもたちの中には、ホームレスになってしまう場合もあるのです。
支援は続ける必要がある
退所後も子どもたちを支援することが重要です。
経済的なサポートや就職支援、生活指導などの面での継続的な支援が必要です。施設を退所した後も、定期的にフォローアップを行い、彼らが安定した生活を送るためのサポート体制を整えることが、社会全体としての責務ではないでしょうか。
キフコの一言コメント
児童養護施設出身者に対する偏見は、時としてその背景にある不正確な情報や誤ったイメージにもとづいています。
しばしば聞く話としては、就職差別です。
“施設出身者は経済的に困っている”という固定観念が、金融機関やお金を扱う職業でリスクがあると見なされ、不当な疑いを受けることが少なくないんです。
施設出身であることを理由に、結婚や人間関係で苦労してしまうケースもあります。これは施設出身者に対するステレオタイプや偏見が今も根深く存在していることを表していますよね。
このような問題は社会的な取り組みやその支援団体による啓発活動によって少しずつ解消に進んでいますが、偏見を完全になくすにはまだ多くの課題があると思います。
私たち一人ひとりが、こうした偏見が一部の偏った情報から生まれるものであることを理解して、正しい知識を持って対処することが必要だと思います。
寄付先の団体の紹介
信頼できる団体の選び方
寄付をする際には信頼できる団体を選ぶことが大切です。
寄付金がどのように使われるのかなど、透明性の高い団体を選ぶことで皆さんの寄付が確実に必要な場所に届くことを確かめることができます。
例えば、団体の活動報告や実績を公開しているか、過去の寄付がどのように活用されたかなどを確認することをお勧めします。
おすすめの寄付先団体
一般財団法人 日本児童養護施設財団
全国の児童養護施設を支援するための活動を行い、特に退所後の子どもたちの自立支援に力を入れています。寄付金は、子どもたちの学習支援や生活支援に使われ、彼らが社会にスムーズに適応できるようサポートしています。
特定非営利活動法人ブリッジフォースマイル
ブリッジフォースマイルは、児童養護施設を退所した子どもたちを対象に、「巣立ちプロジェクト」などの自立支援プログラムを提供しています。
生活必需品の提供や、メンタリングプログラムなど、多岐にわたるサポートを行っています。
認定特定非営利活動法人 Learning for All
貧困状態にある子どもたちに対して、学習支援や食事の提供を行いながら、彼らの生活全般をサポートする包括的なプログラムを提供。特に、学習支援を通じて、未来の可能性を広げるためのサポートに力を入れています。
寄付に伴う費用負担と税制優遇措置
寄付にかかる費用
物品寄付の場合だと、一般的には送料を寄付者が負担する必要があります。
中には、寄付金と併せて送料や手数料の負担が必要となる場合もありますので、これらの費用が発生することを事前に確認し、寄付を検討するようにしてください。
税制優遇措置について
非営利団体の中でも、国から認可を受けた認定NPO法人であれば、寄付を行う際に税制上の優遇措置を受けることができる場合があります。
日本では、特定の寄付金に対して所得税や住民税の控除が適用される制度があり、寄付を通じて社会に貢献することで、税制上の恩恵を受けることができます。寄付金控除を申請するためには、領収書を保管し、確定申告の際に提出する必要がありますので、詳しくは、国税庁のウェブサイトや寄付先団体の情報を確認しましょう。
こちらも合わせてお読みください
寄付後の期待。施設との関係。
寄付後の注意点
寄付を行った後に、施設からのお礼や写真などを過度に期待しすぎるのは避けましょう。
施設側にとって、過度な対応は業務の負担となりかえって逆効果になることがあります。
寄付者が施設に対して過剰な要求をしないことも重要です。例えば、「寄付をしたから」といって、子どもたちとの面会や施設見学を強要することは、施設の運営を妨げる可能性があります。
寄付は、あくまで支援の一環として行われるものであり、長期的な視点で施設や子どもたちとの良好な関係を築くことができるといいですね。
まとめ
児童養護施設で暮らす子どもたちは、さまざまな困難を抱えながらも未来に向けて懸命に生きています。
中には想像を絶するような理不尽や誰かの身勝手により、心も体もボロボロになってしまった子どもたちもいます。一刻も早く、彼らが安全で健やかに成長できるよう、私たち一人ひとりができることは何かを考え、行動に移すことが大切です。
寄付はその一つの手段であり、ほんの些細な支援でも子どもたちにとっては大きな力となります。子どもたちに明るい未来をもたらす大きな一歩となることを願い、寄付の力を信じてみてください。
寄付文化の醸成と意識改革
寄付を行うことは、一見小さな行動に思えるかもしれませんが、社会全体において非常に重要な役割を果たします。
日本ではまだ欧米ほど寄付文化が浸透していない部分がありますが、寄付を通じて社会に貢献することは、自分自身の生き方にも必ず豊かさをもたらしてくれます。
私たち一人ひとりが、社会の一員として未来を生きる子どもたちを支えるという意識を持つことで、より良い社会が築かれていくのではないでしょうか。