NPO法人(特定非営利活動法人)は、社会貢献を目的とした団体として広く知られています。しかし、NPO法人に対する多くの誤解や疑問も存在するようです。
特に「NPO法人は利益を出してはいけないのか?」「NPO法人で働く人たちは給料をもらえるのか?」という疑問は、多くの人々が抱くものですですから、本記事では、これらの誤解を解消し、NPO法人の実態を明らかにしていきたいと思います。
目次
NPO法人とは
NPO法人とは、1998年に施行された特定非営利活動促進法に基づいて設立される法人です。この法人の主な目的は、公益に資する活動を行うことであり、利益の分配を目的としていません。
また、NPO法人の設立には、最低10名の社員(会員)と3名の理事、1名の監事が必要で、設立の際には所轄庁の認証を受ける必要があります。
NPO法人は利益を出しても良いのか?
結論から言うと、NPO法人が利益を出すことは可能です。
法律上も、NPO法人が収益事業を行ってはならないとは記載されていません。NPO法人が非営利とされるのは、得た利益を構成員に分配しないという意味です。具体的には、利益は全て今後の活動資金として使用されることが求められます。
利益の使い道
NPO法人で生じた利益は、事業の拡大や質の向上、次年度の活動資金として活用されます。法人が解散する際には、残余財産は他のNPO法人や公共団体に寄付されることが義務付けられています。
NPO法人での給料
NPO法人で働く人々も当然ながら給料を受け取ります。
非営利だからといって無償で働かなければならないわけではありません。むしろ、安定した運営を行うためには、職員への適切な給与の支払いが不可欠です。給与の支払いは事業収益や寄付金から賄われ、その給与は市場相場に基づいて設定されます。
しかし、近年ではNPO法人における”やりがい搾取”が問題視されています。
やりがい搾取とは、NPOで働きたいと願う若者の「やりがい」や「社会貢献したい」という気持ちを利用し、彼らに適切な給与を支払わず、生活やキャリアプランの形成に必要な支援を怠ることを指してます。このような団体では、職員が生活を維持するのが困難になり、結果的に高い離職率を招きます。これはNPO法人全体の活動の質を低下させ、持続可能な社会貢献活動の実現を妨げる悪循環を生み出す原因となります。
給与の実態と重要性
適切な給与を受け取ることは、NPO法人で働く人々が持続的に活動を続けるために不可欠です。NPO法人の職員の給与は、事業収益や寄付金から支払われますが、その給与は市場相場に基づいて設定されるべきです。
これは、職員が生活費を賄いながらも、社会課題の解決に向けた活動に専念できる環境を提供するためであり、職員のモチベーションを維持し、スキルアップや自己成長を促進する要因となるはずです。
社会課題解決への影響
若者がNPO法人で働く理由の多くは、社会課題の解決に貢献したいという強い想いからだと思うのですが、その想いだけでは長期的なキャリアを築くことは困難です。
適切な給与と職場環境が整っていることで、NPO法人での活動を通じてスキルを磨き、キャリアアップを図ることができます。
給与が適切であれば、NPO法人での経験を通じて得られる専門知識やネットワークも活用しやすくなり、高い専門性を持った人材を確保し、質の高い社会貢献活動を継続することができるでしょう。
給与の実態
NPO法人の職員の給与は、事業収益や寄付金から支払われます。ただし、利益の分配はできないため、企業のようなボーナスや利益分配金は存在しません。
職員の給与は、活動資金の一部として計上されています。詳しくは各団体がホームページなどで公開している報告書に記載されていますので、気になる方はぜひご覧になってみてください。
NPO法人と株式会社の違い
NPO法人(特定非営利活動法人)と株式会社は、法人としての運営方法や目的が大きく異なります。その違いを詳しくみていきましょう。
目的と活動の違い
NPO法人:
- 目的: NPO法人は公益に資する活動を主な目的としています。具体的には、福祉、教育、環境保護など、社会的に有益な活動を行うことが主たる目標でのためであり、営利を追求するのではなく、社会貢献を目的としています。
- 活動: NPO法人は特定非営利活動促進法に定められた20の分野(例:保健、医療、福祉、社会教育、環境保護など)に基づいて活動します。これらの活動は、社会のニーズに応えるものであり、公共の利益を増進することを目指しています。
株式会社:
- 目的: 株式会社の主な目的は営利を追求することです。事業活動を通じて利益を上げ、それを株主に分配することが主な目標となります。
- 活動: 株式会社は、あらゆる合法的な事業活動を行うことができます。目的は多岐にわたり、特定の社会貢献活動に限定されることはありません。利益を最大化するための戦略を立て、競争市場での成功を目指します。
利益とその分配
NPO法人:
- 利益の扱い: NPO法人は利益を上げることは許されていますが、その利益を構成員(会員)に分配することはできません。得られた利益は全て次年度以降の活動資金として使用され、組織の持続可能性や活動の質の向上に充てられます。
- 残余財産の処分: NPO法人が解散する際には、残余財産は他のNPO法人や国、地方公共団体、公益財団法人などに寄付されることが義務付けられています。
株式会社:
- 利益の扱い: 株式会社は事業活動によって利益を上げ、その利益は株主に対して配当として分配されます。利益分配は株主の投資に対するリターンとなり、株主価値の向上を目指します。
- 残余財産の処分: 株式会社が解散する際には、残余財産は株主に分配されます。分配は株主の出資比率に応じて行われます。
組織運営とガバナンス
NPO法人:
- ガバナンス: NPO法人は、理事会や社員総会を通じて運営されます。理事会は日常業務の監督や戦略的決定を行い、社員総会は重要な事項を決議します。理事や社員は報酬を受けることができますが、全体の運営は透明性と公共性が求められています。
- 報告義務: NPO法人は定期的に活動報告書や財務報告書を所轄庁に提出する義務があります。これにより、社会的信用を維持し、透明性を確保します。
株式会社:
- ガバナンス: 株式会社は、取締役会や株主総会を通じて運営されます。取締役会は会社の経営戦略を決定し、業務執行を監督します。株主総会は、取締役の選任や重要な経営方針の決定を行います。
- 報告義務: 株式会社も財務報告書の公開が義務付けられており、株主や監査機関に対して透明性を確保します。ただし、NPO法人に比べて報告義務の範囲や内容は異なります。
税制上の取り扱い
NPO法人:
- 税制優遇: NPO法人は公益活動を行うため、税制上の優遇措置を受けることができます。収益事業以外の部分に対しては法人税が非課税となります。また、寄付金は非課税扱いとなり、活動資金の調達がしやすくなります。
- 課税: 収益事業から得た所得に対しては法人税が課税されますが、公益目的の事業に対する税制優遇措置があります。
株式会社:
- 税制: 株式会社はすべての収益に対して法人税が課されます。税率は標準的な法人税率が適用され、収益の一部を税として納めます。
- 税務申告: 株式会社は毎年決算を行い、財務報告書を基に税務申告を行います。納税は事業運営の重要な一部となります。
NPO法人のメリットとデメリット
NPO法人の設立には、多くのメリットとデメリットがあります。
メリット
- 社会的信用度の高さ: NPO法人は公益に資する活動を行うため、社会的信用が高いとされています。これにより、企業や行政との連携が容易になります。
- 税制優遇: NPO法人は、収益事業以外の部分に関して税制上の優遇を受けることができます。例えば、寄付金は非課税扱いとなるため、運営資金の確保が容易になります。
デメリット
- 設立と運営の手続きの煩雑さ: NPO法人の設立には所轄庁の認証が必要であり、その手続きには時間と手間がかかります。また、定期的な報告義務も課せられます。
- 収益の制限: 収益事業を行うことはできますが、その収益は全て活動資金として使用されるため、個人への分配はできません。これが長期的な資金計画を立てる際の制約となることがあります。
NPO法人に関する誤解の解消
NPO法人に関する誤解の多くは、「非営利」という言葉に由来します。非営利とは、利益を出してはいけないという意味ではなく、得た利益を分配しないという意味です。
したがって、NPO法人でも利益を上げることは可能であり、その利益は全て次年度以降の活動資金として使用されるのです。
NPO法人とボランティアの違い
多くの人々がNPO法人をボランティアと同一視しますが、これは誤解です。
ボランティアは無償で活動を行いますが、NPO法人は収益事業を行い、その収益で活動を継続します。つまり、NPO法人は利益を上げて、その利益を活動資金に充てることができるということです。
まとめ
NPO法人は、社会貢献を目的とした非営利法人ですが、利益を出すことは問題ありません。その利益は全て活動資金として使用され、構成員に分配されることはありません。また、NPO法人で働く人々も適切な給与を受け取ることができます。これらの点を理解することで、NPO法人に対する誤解を解消し、より多くの人々が社会貢献活動に参加できるようになるでしょう。