「保護犬」という言葉が広がり、多くの人がペットとして保護犬を迎え入れる選択肢を考えるようになりました。
しかし、その善意を利用し、動物の福祉を軽視した行為や詐欺的な活動を行う団体が少なくないことをご存じでしょうか?
多くの人が「保護犬」として支援を提供しようとする背景には、犬の殺処分ゼロを目指した社会的な動きがあり、愛護精神から寄付や支援活動に関わる人も増えています。
しかし残念ながら、一部の団体はこの善意を悪用し、寄付金を不正に使用したり、動物たちを過密飼育することで利益を上げる悪徳な”ビジネスモデル”を取り入れたりするケースが報告されています。
「殺処分ゼロ」のスローガンの裏で、実際には劣悪な環境に動物たちを閉じ込め、適切なケアや医療を提供しないことで命を苦しめる団体も存在します。こうした背景から、どの団体が本当に信頼できるのか、どのように見極めるべきかは支援者にとって大きな問題です。
今回は、保護犬団体の闇について具体例を用いて解説し、信頼できる団体を選ぶポイントをご紹介したいと思います。
皆さんの善意が無駄にならないために、そして保護される犬たちが本当に安心して暮らせる環境を得られるために、ぜひ知っていただければ嬉しいです。
目次
保護犬団体に潜む闇とその実態
寄付詐欺行為
多くの保護犬団体が、動物福祉のためにとSNSなどで寄付を呼びかけています。
しかし中には集めた寄付金を犬たちの世話に使わず、運営者の個人利用に使っているケースも見られます。
鹿児島県で批判を浴びているある団体は、SNSで皮膚病の犬の写真を使い「殺処分を避けた犬たち」と訴えかけ、多くの寄付を集めました。
しかし、実際には犬たちは満足な食事も散歩も与えられず、狭いケージで衰弱させられたままでした。支援者からの善意の寄付が動物たちに還元されるどころか、運営者の生活費などに流用されるという事例です。
このような「支援金詐欺」は、SNSの影響力を悪用し、寄付を募りやすい状況を利用している点が特徴です。
虐待・不適正な飼養
保護犬を救うはずの団体が、実は動物を苦しめる行為を行っていることもあります。
例えば、ある団体では「殺処分ゼロ」を掲げて多くの犬を引き取っていますが、実際には飼育に十分なスペースが確保されておらず、犬たちは狭い場所で過密に飼育されていたケースがありました。
犬は社会的な動物ですから、適切な環境や食事/ケアを必要としますが、これが欠けると多大なストレスがかかり、健康状態が悪化することもあります。
過密飼育は犬同士の喧嘩や怪我を引き起こすリスクも高く、最悪の場合、施設内で犬が他の犬に殺されてしまうという悲劇も起こり得ます。
このような団体は、保護活動を名乗りながら、実際には動物たちを福祉の観点から無視していることは間違いありません。
「保護犬ビジネス」の問題
一部の団体は、動物愛護を装いながら営利目的で活動しています。
こうした「保護ビジネス」では、ペットショップで売れ残った犬や繁殖に使われた犬を「保護犬」として引き取り、譲渡費用として高額な請求をすることもあります。
中には、犬が年齢を重ねると医療費が高くなることを理由に保険加入を義務付けたり、特定な高額のフードの購入を譲渡条件にする団体もあります。これは、単に犬のケアだけでなく、ビジネスとして保護活動を利用している典型的なケースであり、営利目的での活動が動物愛護の精神に反するのは明らかです。
高額な譲渡費用と不透明な内訳
保護犬の譲渡に対して非常に高額な費用を請求している団体は実際に存在します。
譲渡費用の中には医療費や管理費が含まれるのが一般的ですが、適正価格を大きく超える金額を要求し、さらにその内訳が不明瞭な場合も見受けられるとのこと。
たとえば、譲渡費用に寄付金が含まれていたり、特定のサービスへの強制加入を条件に含めたりすることで、譲渡にかかるコストが不当に上乗せされています。
これは消費者に対して不誠実であり、保護活動の本来の意図から外れていると言わざるを得ません。
違法な活動や制度の悪用
非営利活動と見せかけた団体が、NPOに似た「非営利活動団体」を名乗り、寄付を募っているケースも問題です。
こうした団体は、あたかもNPO法人のように見せかけるため、支援者が信頼を寄せやすく、寄付が集まりやすくなります。さらに、日本では動物愛護管理法が改正されましたが、この法律の一部を悪用し、保護活動の名のもとに営利目的の活動を行っている団体も存在します。
支援者が制度の仕組みや法的な背景を把握しておくことが、こうした団体に引っかからないための防衛策と言えるでしょう。
譲渡後のトラブルと事前説明不足
保護犬を譲渡する際に、団体側が事前に犬の健康状態や病歴を十分に説明せず、譲渡後に病気が発覚し、里親が高額な医療費を負担することになるトラブルも見られます。
譲渡時の事前説明が不十分であるために、受け入れ側が思わぬ負担を強いられることもあるため、適切な説明や記録の提供を怠る団体には注意するようにしましょう。
信頼できる保護団体の基準
動物愛護を掲げる保護犬団体の中でも、信頼できる団体とそうでない団体が存在します。ここでは、支援先を選ぶ際に参考になる、信頼性の高い保護団体に共通する基準を詳しく解説していきます。
透明性のある収支報告
信頼できる保護団体の特徴のひとつは、収支の透明性です。
年度ごとの活動報告や収支内容を公開し、寄付金がどのように使われたかを明確にしている団体が挙げられます。
動物の保護活動には、飼育費、医療費、施設維持費、人件費などがかかりますが、それらの内訳が明示され、寄付金が確実に動物の福祉に使われているかを確認できることが大切です。
収支が公開されていない場合、集まった寄付金が本当に動物のケアに使われているかどうかが不明確になるため、支援者としては慎重になるべきです。
実際の活動内容が確認できる
活動内容が明確に確認できるかどうかも重要な基準です。
信頼できる保護団体は、SNSや公式サイトで活動内容を具体的に報告しており、どのように動物を保護しケアしているか、また譲渡までのプロセスを詳細に公開しています。
実際に保護された動物たちの健康状態や生活の様子を知ることができ、団体の活動の信頼性を確認することができます。また、保護犬の譲渡プロセスが透明で、一匹一匹のケアがしっかりと行き届いている団体であれば、動物福祉の視点からも評価が高いといえるでしょう。
保護活動の質と倫理基準
信頼できる団体は、過剰な保護頭数を避け、各個体に必要なケアや医療を提供しています。
動物の福祉を第一に考え、引き取り数を増やすだけでなく、動物たちが心身ともに健康でいられるような環境を整えることを優先しています。譲渡を急ぐあまりに犬たちの健康状態を軽視したり、条件を甘くしたりするのではなく、譲渡先の家族とも慎重にマッチングを行う姿勢を持つ団体が信頼に値します。
動物福祉を重視する団体は、愛護の精神に基づいたケアやしつけを徹底し、譲渡の適正さも細やかに判断しているため、支援先として適しています。
飼育環境の明確化と見学の可否
信頼できる団体は飼育環境についても透明性を保ち、必要に応じて見学を受け入れる姿勢を示しています。
たとえば、シェルターの見学を受け付ける、もしくは施設の写真や動画を公開することで、飼育スペースや清潔さ、動物たちが適切にケアされていることを確認できる環境が整っています。
多くの動物を保護しているからこそ、清潔で衛生的な環境が保たれていることが不可欠です。見学を通じて飼育環境を公開することで、支援者が団体の活動に対する信頼を寄せやすくなります。
定期的な医療チェックとリハビリ
動物の健康を維持するために、定期的な医療チェックやリハビリを行う体制を整えていることも信頼性の高い団体の特徴です。
保護された動物は、獣医師による健康診断を受け、必要なワクチン接種や治療を施されることが基本です。
また、過去に虐待や飼育放棄などを経験し、心に傷を負った動物には、心のケアやリハビリが行われることもあります。こうした医療やリハビリは大きな費用がかかりますが、信頼できる団体は寄付金や活動資金を活用し、定期的なケアを欠かさずに行っています。
まとめ
「保護犬」という言葉が浸透し、多くの人が保護団体への寄付や支援を検討するようになりました。
しかし、すべての団体が動物福祉を最優先に考えているとは限らないのが現状です。善意を寄付という形で届けても、その支援が動物たちに真に役立てられていない場合もあり、慎重な判断が求められます。
支援者としても、信頼できる団体を見極めるための基準や知識を持つことが欠かせません。
改めて、信頼性の高い団体にはいくつかの共通点があります。
収支報告が透明であること、動物の飼育環境が公開され、定期的に適切な医療やケアが施されていることなどが重要な基準です。過剰な頭数を抱えることなく、動物一匹一匹のケアを大切にし、譲渡の際にも慎重にマッチングを行っている団体であれば、支援に対する安心感も増します。
こうした団体を見つけ、支援を行うことで、寄付やボランティア活動が動物たちの福祉に貢献できるはずです。
保護犬や保護団体に対する支援は、私たちの善意を社会貢献として具現化する素晴らしい方法ですが、私たち一人ひとりが支援先をしっかりと選び、動物福祉を本当に実現できる団体を見極めることで、動物たちの未来が変わります。
このように、信頼できる保護団体の見極め方を意識しながら、今後の支援を検討してみてはいかがでしょうか。