怪しい?【NPOカタリバ】を勝手にレビュー

NPO法人カタリバは”すべての10代に意欲と創造性を“という理念を掲げ、2001年に設立されました。
現代の日本の若者が抱える複雑な課題に深く根ざし、特に「教育格差」や「貧困問題」によって生じる「きっかけ格差」に対し、平等な学びの機会と安心できる居場所を提供しています。
近年では、不登校の増加や家庭の経済的困窮も顕著になり、カタリバが掲げる「きっかけ格差の解消」という取り組みがますます重要になっています。

カタリバの理念は、学びを通じて10代が「未来をつくる力」を育む社会の実現にあります。この理念のもと、カタリバは学校や地域社会と連携し、地域差や家庭環境に左右されない支援を通じて、すべての10代が将来に向かう意欲を持てるよう尽力しています。

設立の経緯と活動の歴史

カタリバは、代表の今村久美さんが高校時代に『大学生のような先輩に出会った経験』が人生を変えたことから、その価値を10代全体に広げることを目指し設立されました。
活動の第一歩は高校生向けの「出張授業カタリ場」でしたが、2011年の東日本大震災後、被災地支援として始まった「コラボ・スクール」を通じ、学びと心のケアの両立を図る教育支援の重要性が大きく認知されました​​。

震災以降も教育格差の拡大が進む中、地域に根ざしたユースセンターの開設や、オンラインでの支援拡充によって、全国的な支援ネットワークを構築しています。20年以上にわたる活動の中で「意欲と創造性を育む社会」を追求し続けてきたカタリバは、その長期的な信頼と安定した実績を示しています。

活動内容と社会的意義

主なプログラムと提供サービス

NPO法人カタリバは、10代の多様なニーズや課題に応じた教育支援プログラムを展開しています。その中でも代表的なのが、「マイプロジェクト」「コラボ・スクール」「ユースセンター」「カタリバオンライン」などになります。それぞれのプログラムは、子どもたちの意欲と創造性を引き出し、未来を切り拓く力を育むことを目的としています。

  • マイプロジェクト
    全国の高校生が自ら設定したテーマに取り組む「探究学習プログラム」で、社会課題の解決や地域貢献といった多様な活動に挑戦する場を提供しています。2022年度には、71,029人の高校生が参加し、自らの興味関心を深める中で、主体性と課題解決力を身につけました​。
  • コラボ・スクール
    東日本大震災後、被災地の子どもたちを支えるために始まった放課後学校で、現在も岩手県大槌町や福島県双葉郡などで運営されています。ここでは、逆境に置かれた子どもたちが「安心して学べる居場所」を提供され、未来への意欲を育んでいます。
  • ユースセンター
    東京都文京区にある「b-lab」や足立区の「アダチベース」など、地域に根ざした施設で、子どもたちが自由に集まり、自らのペースで学べる場所です。10代にとって安心して「ただいま」と帰ってこられる場所として、多くの利用者に愛されています。
  • カタリバオンライン
    地理的な制約を超えて支援が受けられるオンラインプログラム。特に不登校や貧困の影響を受ける子どもたちに向け、対話型のサポートや学びの機会を提供しています。

活動テーマと具体的な成果

カタリバの活動は、「10代の日常を探究に」「逆境から未来をつくる」などの4つのテーマで展開されています。
例えば「10代の日常を探究に」では学校や地域での探究学習や対話型学習を推進し、自己表現の場を提供しています。「逆境から未来をつくる」では、不登校やヤングケアラー支援を行い、子どもたちが困難を乗り越える力を身につけるサポートをしています。

こうした活動を通じ、2022年度は全国で117,453人もの子どもたちがカタリバの支援を受けました​​。

寄付の具体的な使い道

寄付金は、主に「子どもたちへの直接支援」として活用されています。
例えば不登校支援では、学びと食事を提供する活動に資金があてられ、2022年度には95人の不登校児童とその保護者103人が支援を受けました。
また、家庭の経済状況により学習機会が制限される子どもたちには、オンラインを通じた学びの場やユースセンターでのサポートが提供されています。

財務状況の透明性と健全性

収入源の内訳と安定性

カタリバの収入源は、寄付金・助成金・会費が全体の77.5%を占めており、残りの20.5%が自治体からの委託費や事業収益となっています。
この収入構造によって、経済的に多様な支援が実現し、財務の安定性が強化されています。
個人寄付だけでなく企業や団体からの支援も多く、これらのパートナーシップがカタリバの活動の持続性を支えています。多角的な収入源により、経済的リスクに対する耐性が高まっていることが、カタリバの活動の安定性に寄与していると考えられます。

支出の内訳と効率的な運営

カタリバの支出は、85.7%が事業費に充てられ、子どもたちの支援活動の直接費用に投入されています。残りの14.3%が運営・管理費に割かれていますが、これは非営利団体として効率的な運営を行っていることの証です。寄付者の資金が可能な限り子どもたちの支援に使われていることがカタリバの財務運営の透明性と信頼性を高めています。

地域密着型のプロジェクトでは、子どもたちと密な関係を築くことで、資金を効果的に活用しつつ最大の成果を上げる運営が行われています​。

財務の健全性と長期的な持続可能性

カタリバは、緊急支援や地域展開のために特定資産を確保しており、予期せぬ事態に対する備えができています。
2022年度の経常収支は黒字であり、長期的な視点での持続可能な運営が実現しています。また、流動資産と負債のバランスも適切で、カタリバは財務基盤が安定している団体といえます。

ガバナンス体制と情報公開

理事会・監査体制の説明

カタリバは、教育や社会福祉の専門家を理事に迎え、運営の信頼性を高めています。
現在、複数の理事や監事が、団体の活動方針や運営を監督しており、内部監査や定期的な評価も実施されています。この体制により団体が持続的に発展し、透明性を確保しながら社会貢献に尽力できる基盤が築かれています。また、教育分野の専門知識を持つ理事が関わることで、より実効性のある支援が実現しています​。

情報公開と透明性

カタリバは、年次報告書活動報告書財務報告書を定期的に公開し、寄付者をはじめとする支援者に対して積極的な情報提供を行っています。
ウェブサイト上には活動内容や資金の使途に関する詳細な報告が掲載されており、誰でもアクセスできる仕組みが整っています。

また、カタリバは寄付者や支援者に対して感謝の意を示すと同時に、寄付金の使い道や活動の進捗について定期的にフィードバックを行っています。寄付者には活動レポートやニュースレターが提供され、実際に寄付がどのように役立っているかが共有されます。

社会的インパクトと持続可能性

日本の社会問題とカタリバの役割

現代の日本では、教育格差や子どもの貧困、不登校の増加が深刻な社会課題となっています。特に、地域や家庭環境の違いによる「きっかけ格差」によって、子どもたちが将来への希望や意欲を失ってしまうケースが増加しています。
カタリバはこうした課題に対し、”すべての10代に意欲と創造性を”という理念のもとで取り組み、教育機会の平等化に貢献しています

未来の展望と直面している課題

今後の展望と短期・長期的目標

カタリバは、今後さらに支援対象の子どもたちを広げ、より多くの10代に「居場所と学び」を届けることを目指しています。
短期的にはオンライン支援の充実や新たな地域での拠点開設を計画しており、特に不登校児童や経済的に困難を抱える子どもたちに対応する体制を強化する方針です。オンライン支援を通じ、地理的な制約を超えた支援が可能となり、より多くの若者が「きっかけ」としての教育の場を得られることを期待します​。

長期的な目標としては、カタリバの支援プログラムを全国的に拡大し、すべての子どもたちが安心して成長できる社会づくりを目指しています。探究学習を通じたキャリア教育や地域復興に向けた人材育成など、子どもたちが自己実現できる環境を増やす取り組みを進めています。将来的には、支援の枠組みをさらに広げ、ユースセンターや学校との連携を通じて地域全体の教育力を高めることも視野に入れているとのことです​。

社会情勢に応じた柔軟な対応と課題

カタリバは、現代の日本社会で急速に変化する子どもたちのニーズに対応し、柔軟に活動を展開してきました。しかし、近年の物価上昇や不登校の増加により、支援の必要性が一層高まっています。これに対し資金調達の安定化と人材確保が今後の大きな課題です。
昨今の物価高騰により活動経費が増大する中で、引き続き支援の質を維持しつつ、支援を拡充するための財源確保が求められています​。

寄付を通じた”未来投資”としての価値

カタリバへの寄付が生む未来投資

カタリバへの寄付は、ただの「一度きりの支援」ではなく、未来を支える「投資」として大きな価値を持っています。教育や居場所の提供を通じて、10代が意欲や創造性を育むことは、社会全体にとっても重要な意味を持つものです。

教育やサポートの場を得た子どもたちが将来、自らの経験をもとに他の人々に寄り添う力を身につけることで、「支援の連鎖」が生まれます。これは、社会が持続的に発展するための「未来投資」として大きな意義を持つかもしれません。

例えば不登校だった子どもたちがカタリバのプログラムを通じて学び直しの機会を得て、社会人としての第一歩を踏み出すことができるとしますが、その一歩が個人の成長だけにとどまらず、次世代の子どもたちに新たな「きっかけ」を提供する循環を生むはずです。
カタリバが支援する若者たちは、未来の社会を担う存在となり、教育への投資がどれほど大きなリターンを生むかを象徴しています​。

信頼性と共感を生むストーリー性

カタリバの活動が多くの寄付者や支援者に支持される理由には、団体の信頼性と共感を呼ぶストーリーが深く関係しています。
代表である今村久美さん自身の経験が団体設立の根底にあり、カタリバの活動を支える強い思いとなっています。

10代の頃、出会いと学びの「きっかけ」によって人生が変わった彼女の経験は、現在カタリバが提供している支援活動にも反映されており、「10代の可能性を信じる」という姿勢が一貫していると思います。

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投稿者: FIRST DONATE編集長 髙崎

非営利団体のファンドレイジング/広報支援を生業とするDO DASH JAPAN株式会社スタッフであり、FIRST DONATE編集長。 自身の体験を元に、寄付やソーシャルグッドな情報収集/記事制作を得意とする。