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雨が降らないというだけで、命が危うくなる場所
ソマリア中部のある村。
かつては雨季になると、小さな畑に緑が戻っていました。
しかし今、空は青く澄んだままです。
雲は流れ、雨は降りません。
母親は、痩せた子どもの腕をそっと撫でながら言います。
「昨日より、少し弱っている気がする」
それは医師の診断ではありません。
けれど、ソマリアでは多くの親が、
子どもの体の変化を“感覚”で察知しなければならない 現実があります。
病院は遠く、薬はなく、
“次の食事”が約束されていない日常のなかで、
干ばつはゆっくりと、しかし確実に命を削っていきます。
この記事では、
ソマリアで起きている 干ばつ・飢餓・気候危機 が、
どのように子どもたちの命を脅かしているのかを、
構造的に、そして丁寧に読み解いていきます。
1. ソマリアとはどんな国か──危機にさらされ続けてきた社会

ソマリアは、アフリカ東部の「アフリカの角」と呼ばれる地域に位置します。
- 人口:約1,800万人
- 人口の約半数が18歳未満
- 長年にわたる内戦と政治不安
- 国家としての制度が脆弱
1990年代以降、
ソマリアは長期的な内戦と国家機能の崩壊を経験してきました。
そのため、
- 医療
- 教育
- 水インフラ
- 食料流通
といった 生活を支える基盤が十分に整わないまま、
人々は暮らしを続けてきました。
この「もともとの脆弱性」が、
現在の気候危機によって一気に表面化しています。
2. 繰り返される干ばつ──異常ではなく「新しい常態」
■ 雨が降らないという異変
ソマリアでは、
過去数年にわたり 雨季の降雨量が極端に減少 しています。
干ばつは珍しい現象ではありません。
しかし近年の干ばつは、次の点で質が異なります。
- 回復する前に次の干ばつが来る
- 雨季そのものが成立しない
- 地下水も枯渇する
つまり、
土地と人が立ち直る時間が与えられていない のです。
■ 気候変動とソマリア
国際的な分析では、
ソマリアは 気候変動の影響を最も強く受ける国のひとつ とされています。
皮肉なことに、
ソマリア自身が温室効果ガスを多く排出しているわけではありません。
それでも、
- 異常気象
- 干ばつ
- 洪水(短期間の集中豪雨)
といった影響を、最前線で受けています。

3. 干ばつが引き起こす「飢餓」の連鎖
■ 農業と牧畜が崩れると、何が起きるのか
ソマリアの多くの人々は、
- 小規模農業
- 家畜(ヤギ・ラクダ・牛)
に生活を依存しています。
干ばつが続くと、
- 作物が育たない
- 家畜が水を得られず死ぬ
- 収入源が一気に消える
という事態が起きます。
これは単なる「食料不足」ではなく、
生活手段そのものの喪失 です。
■ 市場に食料があっても、買えない現実
ソマリアの飢餓は、
「食べ物が存在しない」ことだけが原因ではありません。
- 収入がない
- 物価が上がる
- 輸送コストが跳ね上がる
その結果、
市場に食料があっても、手が届かない家庭 が急増します。
まず削られるのは、
子どもの食事です。
4. 子どもたちを直撃する栄養不良
■ 栄養不良は「目に見えない危機」
ソマリアでは、
多くの子どもが 急性栄養不良 に陥っています。
栄養不良の恐ろしさは、
必ずしもすぐに命を奪うわけではない点にあります。
- 体重が増えない
- 免疫が弱る
- 感染症にかかりやすくなる
そして、
治療がなければ突然命を落とす こともあります。
特に5歳未満の子どもにとって、
栄養不良は「静かに進行する致命的な状態」です。
■ 母親が直面する選択
母親は、限られた食料を前に、
次のような選択を迫られます。
- 赤ちゃんに与えるか
- 上の子に分けるか
- 自分は食べずに耐えるか
こうした選択が、
毎日、繰り返されている のがソマリアの現実です。

5. 医療と水が不足すると、危機は加速する
■ 医療施設の不足
ソマリアでは、
- 医師不足
- 医療施設の不足
- 医薬品の欠乏
が慢性的です。
そのため、
- 栄養不良の治療が続かない
- 下痢や肺炎が命取りになる
- 出産時のリスクが極めて高い
といった状況が生まれます。
■ 安全な水がないという致命的な問題
干ばつが進むと、
水源が枯渇し、人々は汚染された水を使わざるを得ません。
- 下痢
- コレラ
- 感染症
これらは、
栄養不良の子どもにとって致命的 です。
水と医療が不足すると、
飢餓の影響は何倍にも拡大します。

6. 教育が断たれると、危機は次世代へ続く
干ばつと飢餓は、
子どもたちから教育の機会も奪います。
- 学校が閉鎖
- 教師が確保できない
- 子どもが働かざるを得ない
結果として、
学校に通えない子どもが増え続けています。
教育を受けられない子どもは、
将来、同じ危機に直面しやすくなります。
これは、
気候危機が貧困の世代間連鎖を生み出す構造 です。
7. なぜソマリアの危機は注目されにくいのか
ソマリアの状況は深刻ですが、
国際ニュースでは断続的にしか取り上げられません。
理由としては、
- 紛争や干ばつが「慢性的」
- 映像が届きにくい
- 劇的な転換点が少ない
といった点があります。
しかし、
静かに続く危機ほど、支援が途切れやすい のも事実です。
8. 国際社会は何を支援しているのか
ソマリアでは、以下の支援が行われています。
- 緊急食料支援
- 栄養治療プログラム
- 安全な水の確保
- 医療支援
- 牧畜・農業の再建支援
- 教育の最低限の継続
特に重要なのは、
短期支援と長期的な回復支援を同時に行うこと です。
9. 日本から考える「気候危機と子ども支援」
ソマリアの干ばつは、
遠い国の出来事に見えるかもしれません。
けれど、
気候変動は国境を越える問題です。
- 排出量が少ない国ほど影響を受ける
- 子どもほど被害を受けやすい
この不均衡こそが、
現代の人道危機の本質 です。
日本からできることは、
まず現実を知り、
「気候問題=環境の話」だけでなく
「子どもの命の問題」 として考えることです。
おわりに──干ばつのなかでも、命は生きようとしている
雨が降らなくても、
子どもたちは生きようとします。
母親は食料を分け合い、
地域は助け合い、
支援が届けば、命はつながります。
ソマリアの子どもたちが直面しているのは、
特別な願いではありません。
- 食べること
- 水を飲むこと
- 病気になったら治療を受けること
- 学ぶこと
それだけです。
この「当たり前」が守られる世界を、
私たちは見過ごさないでいることができます。
干ばつと飢餓が、
当たり前の運命として受け入れられてしまわないように。
知り、考え、忘れないこと が、
最初の支援になります。
