怪しい?【国連UNHCR協会】寄付金の活用事例や詐欺被害の全貌について

世界では今もなお現在進行形で紛争迫害自然災害によって家を追われた難民や国内避難民が急増しています。
最新のデータでは、なんと1億を超える人びとが自国を離れ、避難生活を余儀なくされています。このような人びとの命を守り、未来を支えるために活動しているのが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)という団体です。

1950年に設立されたUNHCRは、国際的な難民保護の最前線で活躍してきました。日本においては2000年に設立された「国連UNHCR協会」が公式窓口として募金活動を行い、日本の寄付者が世界中の難民支援に貢献できるようサポートしています。しかし、中には「本当に信頼できる団体なのか?」と疑問を抱くこともあるでしょう。

今回は、UNHCRの活動内容や財務健全性、寄付の透明性について詳しく解説し、その信頼性と寄付の重要性をお伝えできればと思います。
UNHCRが提供する支援の現実的な影響を知ることで、私たちの寄付がどれほど多くの命を救い、未来を作り出しているかを感じていただけるはずです。

難民や移民について詳しく知りたい方はこちら

団体概要とミッション

UNHCRの設立背景と歴史

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、1950年に設立された国際的な人道支援機関です。
そのミッションは、紛争や迫害により家を追われた難民・国内避難民を保護し、難民問題の解決を目指すこと。UNHCRは現在136か国にわたる活動を展開し、世界中の難民の命を守り続けています。

また、1954年と1981年の2度、ノーベル平和賞を受賞しており、その実績は国際的に高く評価されています。

国連UNHCR協会の役割

日本国内においては、2000年に設立された「国連UNHCR協会」がUNHCRの唯一の公式支援窓口として活動しています。
国連UNHCR協会は、個人や企業からの寄付を募り、UNHCRの活動資金を提供するだけでなく、広報活動を通じて難民支援の重要性を広めています。認定NPO法人であり、寄付金控除の対象となるため、寄付者には税制上の優遇措置も適用されます。

こちらも合わせてお読みください


主要な活動内容と成果

UNHCRの活動は多岐に渡りますが、一部の主要な活動について取り上げてみたいと思います。さらに詳しく知りたい方はホームページをご覧ください。

緊急支援活動

UNHCRの中心的な役割は、世界中で発生する紛争や自然災害による緊急事態への迅速な対応です。
UNHCRは、72時間以内に緊急支援チームを派遣し、テントや毛布、食料、医療物資を提供します。2019年には269回の緊急対応を実施し、難民や国内避難民の命を救いました​。

さらにUNHCRは難民キャンプの設営や、現地での衛生環境の改善、飲料水の確保など、物資の供給だけでなく、現地の人びとが安全に生活できる環境を整備しています。
COVID-19パンデミックの際には、感染防止対策として手洗い場の設置や衛生用品の提供を行い、難民キャンプでの感染拡大を防ぎました​。

保護活動

UNHCRは、難民や国内避難民の基本的人権を守るため、幅広い保護活動を行っています。
避難先での不当な暴力や性的虐待からの保護、心理的なトラウマを抱える人びとへのメンタルヘルスケアの提供、さらには女性や子どもたちの安全を確保するための特別なプログラムも実施しています。
こうした活動により難民の尊厳が守られ、彼らが再び自立して生活できる環境を築く支援を行っています​​。

教育支援と職業訓練

長期的な支援として、UNHCRは教育職業訓練の提供にも力を入れています。
特に、現地の子どもたちが学校教育を受けられるよう難民キャンプに学校を設置し、学用品の提供や教師の育成を行っています。
2022年末までに約51%の学齢期の難民が学校に通えていない状況を改善するための教育支援プログラムを展開しています​。

また、職業訓練プログラムも実施しており、若者や成人している難民が新たな職業スキルを学び、自立した生活を送るための支援を提供しています。これにより、避難生活を送る難民が長期的に自立し、社会復帰できるようなサポートを実施しています​​。

現金給付支援

難民が自身のニーズに基づいて必要な物を購入できるよう、現金給付支援も行っています。これは、食料や医療費、シェルターなど、多様なニーズに対応できる柔軟な支援手段であり、地元経済の活性化にも貢献することができるため、受け入れコミュニティとの共存を促進する効果もあります​。

緒方貞子氏の貢献

第8代国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子さんの存在もUNHCRの活動に大きな影響を与えました。
緒方氏は、難民支援の枠組みを拡大し、国内避難民への支援を本格化させました。特に彼女のリーダーシップの下、UNHCRは戦争や内戦により発生する国内避難民への迅速な支援を開始し、その後の難民支援の国際的な基準を大きく押し上げました

緒方貞子(おがた さだこ)さん

生年月日: 1927年9月16日
没年月日: 2019年10月22日
出身地: 東京都、東京市(現・東京都)

緒方貞子さんは日本を代表する国際政治学者であり、国際社会で高く評価された国連の要職を務めた人物です。
1991年から2000年まで第8代国連難民高等弁務官として難民支援活動に従事し、難民や国内避難民に対する国際的な保護を推進しました。

緒方さんは1950年代から国連に関わり、アジアや中東を中心に国際紛争解決のための人道支援活動を行いました。特に彼女が国連難民高等弁務官を務めた期間中、冷戦後の大規模な人道危機に直面し、旧ユーゴスラビアやルワンダの紛争、そしてクルド難民問題など、多くの難民問題に尽力しました。また、従来は支援対象外だった国内避難民にも支援を広げ、UNHCRの活動範囲を拡大させました​。

その後、2003年から2012年まで日本の国際協力機構(JICA)理事長を務め、日本の国際協力を牽引し、発展途上国支援においても貢献しました。

主な業績:

  • 第8代国連難民高等弁務官(1991年~2000年)
  • 国内避難民への支援を本格化させ、UNHCRの活動範囲を拡大
  • JICA(国際協力機構)理事長として、日本の国際協力を推進
  • 人道支援の現場を重視し、各紛争地を積極的に視察しながら政策を進めた​​。

評価と受賞:

  • 人道支援に尽力した功績から、国内外で高い評価を受けた
  • 「現場主義」を貫き、直接的な人道支援を率いたリーダーシップは、UNHCRの歴史に深く刻まれています

緒方貞子さんのリーダーシップは、UNHCRだけでなく世界中の難民支援活動に大きな影響を与え、彼女の理念と実践は今でも国際人道援助の礎となっています。


受益者数とカバー範囲

支援対象者数

UNHCRは現在、1億2260万人に上る難民、国内避難民、無国籍者などを対象に支援を行っています。これは人類史上で最も多い避難民数であり、UNHCRの役割がこれまで以上に重要であることを示しています。
これだけの規模の支援を行えるのは、UNHCRが国際機関やパートナーNGOと強力な連携を持っているからに他なりません。

カバー範囲

UNHCRは136か国に拠点を持ち、難民キャンプの運営、シェルター提供、医療支援、教育プログラムの実施など、非常に多岐にわたる活動を行っています。特に紛争地域や緊急事態が発生した場所での活動は、難民たちの命を直接守るだけでなく、彼らの将来を見据えた支援も提供しています。


寄付の影響と実績

寄付の活用事例

UNHCRへの寄付は、実際にどのように使われているのでしょうか。
公式サイトに掲載されている寄付金の活用事例についてまとめてみました。

月額1,500円
60本のワクチン提供
紛争や避難の影響で感染症リスクが高まる地域に、子どもたちを守るためのワクチンを提供します。

月額3,000円
家族用の緊急シェルター1つ分
避難を余儀なくされた家族が、雨風をしのぎ、安全な場所で暮らせるための緊急シェルターを設置します。

月額5,000円
2人分の緊急医療キット
紛争や自然災害によってけがを負った人々に、応急処置や感染症予防のための医療キットを提供します。

月額10,000円
1世帯分の食糧支援(1か月分)
難民キャンプに避難している家族が、1か月間必要とする食料を供給します。

月額20,000円
学校教育支援キット1つ分
学校に通えない子どもたちに、ノートや鉛筆など学習に必要な教育用品を提供し、学びの機会を広げます。

月額50,000円
難民キャンプ内の衛生設備の改善
安全で清潔なトイレや手洗い場を設置し、難民キャンプでの感染症予防と健康維持に貢献します。


UNHCRの財務健全性と透明性

財務状況

2023年のUNHCRの財務報告によると、主な収入源は寄付金であり、総額は8,962,129,052円に上ります。
そのうち、UNHCR本部への支援金として10,324,182,441円が送金されており、これは支出の最大項目です。

収入と支出の詳細は毎年公式サイトで報告書として公開され、透明性が保たれています。

財務報告の公開

UNHCRは毎年の財務報告書を公式ウェブサイトで公開し、すべての寄付金がどのように使われているかを詳細に説明しています。
寄付者に対しては確実に信頼できる情報を提供しており、この透明性がUNHCRへの寄付の安全性を高めているものと思います。


組織のガバナンスと構造

UNHCRの透明性とガバナンス

UNHCRは理事会や監査体制を通じて、高いレベルのガバナンスを維持しています。
もちろん国連機関ですから、日本政府や各国政府との密接な連携があり、民間からの寄付も含めた資金調達が行われています。また、寄付者の意見やニーズにも耳を傾け、透明性のある運営を実現しています。

詐欺対策の取り組み

近年、UNHCRを語る詐欺行為が増加しているようですが、UNHCRは公式サイトで詐欺対策を強化し、寄付者が安全に寄付を行える環境の整備や声明を発表しています。
詐欺団体の偽装に関する情報を提供し、安心して寄付できるよう注意喚起を行っています。


資金調達方法の多様性

多様な資金源

UNHCRは、個人寄付、企業協賛、クラウドファンディング、さらには遺産/遺贈寄付といった多様な資金調達方法を展開しています。これにより、幅広い層の支援を受け入れることが可能となり、安定的な資金源の確保に成功しています。

毎月の継続寄付(マンスリーサポート)は、UNHCRの持続的な活動にとって非常に重要です。
緊急支援だけでなく、難民の長期的な支援、教育、職業訓練など、未来を見据えたプロジェクトに役立てられています。


社会的インパクト

教育と自立支援

UNHCRが行う教育支援は、難民が社会復帰し、自立した生活を送るための基盤を築くまでを支援する活動です。職業訓練や教育を通じて、難民が受け入れ国で新たなスタートを切る手助けをするため、難民はただの支援の受益者ではなく、社会の一員として再び社会で活躍できるようにするための活動なのです。

また、UNHCRは各国政府や他の国連機関、その他多くのNGOと協力し、グローバルな支援ネットワークを構築しています。これにより、支援が必要な地域に迅速に対応できる体制を整えており、現場での効果的な支援が可能となっています。


今後の展望と課題

UNHCRは、次の緊急事態にも迅速に対応できるよう、備蓄物資や緊急支援体制の強化を常に進めているようです。
教育や自立支援プログラムを拡充し、難民が将来的に安定した生活を送れるよう支援しています。
しかしUNHCRは資金調達の多様化を進めていますが、支援対象者が増加し続ける中で、すべての難民に十分な支援を行うためにさらなる資金が必要とのことです。
世界的な不安定な情勢が続く中で、支援が届きにくい地域へのアクセスも課題となっています。

この記事がいいねと思ったら、シェアをお願いします!

投稿者: FIRST DONATE編集長 髙崎

非営利団体のファンドレイジング/広報支援を生業とするDO DASH JAPAN株式会社スタッフであり、FIRST DONATE編集長。 自身の体験を元に、寄付やソーシャルグッドな情報収集/記事制作を得意とする。