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【イエメンの子どもたち】「世界最悪の人道危機」と呼ばれる国

イエメン西部のある村。
朝になっても、家の中に朝食はありません。

母親は子どもにこう言います。
「今日はあとで、きっと何かあるよ」

けれどその「あとで」は、来ない日もあります。
空腹は特別な出来事ではなく、
我慢するもの、やり過ごすものとして、日常に組み込まれてしまっている のです。

国連はイエメンを、
「世界最悪の人道危機(the world’s worst humanitarian crisis)」
と表現してきました。

この記事では、
なぜイエメンがそこまで深刻な状況に置かれているのか、
特に 子どもたちの飢餓・栄養不良・医療崩壊 に焦点を当て、
ニュースでは断片的にしか語られない“構造”を丁寧に解説します。

目次

  • 1 1. イエメンとはどんな国か──紛争以前から脆弱だった社会基盤
  • 2 2. なぜイエメンはここまで崩壊したのか
    • 2.1 ■ 内戦の長期化と国の分断
  • 3 3. 子どもたちを直撃する「飢餓」という問題
    • 3.1 ■ 食べ物がないのではなく、「買えない」
    • 3.2 ■ 深刻な栄養不良の実態
  • 4 4. 医療崩壊──助かるはずの命が助からない理由
    • 4.1 ■ 病院が機能していない現実
    • 4.2 ■ 予防できたはずの病気が命を奪う
  • 5 5. 教育の喪失と「未来の消失」
  • 6 6. なぜイエメンの危機は「忘れられやすい」のか
  • 7 7. 国際社会はどのような支援を行っているのか
  • 8 8. 日本から考えるイエメン支援の意味
  • 9 おわりに──「最悪」と呼ばれる状況を、当たり前にしないために

1. イエメンとはどんな国か──紛争以前から脆弱だった社会基盤

イエメンはアラビア半島の南端に位置する国です。

  • 人口:約3,300万人
  • 人口の約半数が18歳未満
  • 中東でも最貧国のひとつ
  • 水資源が極端に乏しい

紛争が始まる以前から、
イエメンは貧困率が高く、医療・教育・水インフラが十分ではありませんでした。

つまりイエメンは、
もともと「危機に耐える余力がほとんどない国」 だったのです。

2. なぜイエメンはここまで崩壊したのか

■ 内戦の長期化と国の分断

2015年以降、イエメンは本格的な内戦状態に入りました。
複数の武装勢力、国外勢力の介入により、戦闘は長期化・複雑化します。

その結果、

  • 港湾・道路の破壊
  • 食料・燃料の輸入制限
  • 通貨価値の下落
  • 公務員給与の未払い

といった 「戦闘以外の要因」 が、人々の生活をじわじわと破壊しました。

イエメンの危機は、爆撃だけでなく、
経済・物流・行政の崩壊によって深まっていった危機 です。

3. 子どもたちを直撃する「飢餓」という問題

■ 食べ物がないのではなく、「買えない」

イエメンでは、食料そのものが世界から消えたわけではありません。
問題は 価格 です。

  • 失業率の上昇
  • 給与未払い
  • 通貨安による物価高騰

その結果、
多くの家庭が「食料を市場で買えない」状態 に陥りました。

特に子どもは、食事の回数や量を真っ先に削られます。

■ 深刻な栄養不良の実態

国際機関の推計では、
イエメンでは 数百万人の子どもが急性栄養不良 に陥っています。

栄養不良は単なる「空腹」ではありません。

  • 免疫力の低下
  • 感染症への脆弱性
  • 身体・知能の発達への長期的影響
  • 最悪の場合、死に至る

特に5歳未満の子どもにとって、
栄養不良は「静かな致命傷」 になります。

4. 医療崩壊──助かるはずの命が助からない理由

■ 病院が機能していない現実

イエメンでは、
医療施設の多くが以下の理由で機能不全に陥っています。

  • 爆撃による施設破壊
  • 医療従事者の不足
  • 医薬品・医療機器の欠乏
  • 電力・燃料不足

結果として、

  • 出産時に適切な医療を受けられない
  • 下痢や感染症で子どもが亡くなる
  • 栄養治療が途中で止まる

といった事態が日常化しています。

■ 予防できたはずの病気が命を奪う

安全な水がない。
ワクチンが届かない。
治療薬がない。

これらはすべて、
紛争がなければ防げた可能性の高い問題 です。

イエメンでは、
コレラなどの感染症が繰り返し流行し、
最も影響を受けるのは常に子どもたちです。

5. 教育の喪失と「未来の消失」

飢餓と医療崩壊は、教育にも直結します。

  • 学校が閉鎖
  • 教師の給与未払い
  • 子どもが働かざるを得ない

結果として、
数百万人の子どもが学校へ通えていません。

教育を受けられない子どもは、
将来、貧困から抜け出す手段を失います。

これは、
危機が次の世代へと引き継がれていく構造 でもあります。

6. なぜイエメンの危機は「忘れられやすい」のか

イエメンの状況は、
規模・深刻さのわりに、国際報道が少ないと指摘されてきました。

理由のひとつは、

  • 紛争が長期化し、ニュース性が薄れる
  • 映像が外に出にくい
  • 単純な善悪構造では語れない

といった点です。

しかし、
報道が減ることと、危機が終わることは同義ではありません。

イエメンでは、
「何も変わらないまま悪化し続ける」という、
最も支援が届きにくい状態が続いています。

7. 国際社会はどのような支援を行っているのか

イエメンでは、主に以下の支援が行われています。

  • 緊急食料支援
  • 栄養治療プログラム
  • 医療施設・移動診療所の運営
  • 安全な水と衛生環境の整備
  • 母子保健支援
  • 教育の最低限の継続

しかし、支援資金は常に不足しており、
必要とされる支援量のすべてを賄えていない のが現状です。

8. 日本から考えるイエメン支援の意味

イエメンの危機は、
地理的にも文化的にも、日本からは遠く感じられるかもしれません。

けれど、

  • 飢餓
  • 医療崩壊
  • 子どもの命の危機

これらは、
人間の尊厳に関わる普遍的な問題 です。

日本からできることは、
まず「知り、忘れないこと」。
そして、短期ではなく 長期的な視点で支援を考えること です。

おわりに──「最悪」と呼ばれる状況を、当たり前にしないために

「世界最悪の人道危機」という言葉は、
あまりに重く、抽象的に聞こえるかもしれません。

けれどその中身は、
今日食べるものがない子ども、
薬がなく命を落とす赤ちゃん、
学校に行けず未来を描けない少年少女 の集積です。

イエメンの子どもたちは、
何か特別なことを望んでいるわけではありません。

  • 十分に食べること
  • 病気になったら治療を受けること
  • 学校で学ぶこと

それだけです。

この“当たり前”が戻らない限り、
イエメンの危機は終わりません。

そして、
その現実を知り続けることは、
私たちが世界とつながり続けるための、ひとつの責任でもあります。

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投稿者: FIRST DONATE編集長 髙崎

非営利団体のファンドレイジング/広報支援を生業とするDO DASH JAPAN株式会社スタッフであり、FIRST DONATE編集長。 自身の体験を元に、寄付やソーシャルグッドな情報収集/記事制作を得意とする。 FIRST DONATE編集長 髙崎 のすべての投稿を表示

投稿者 FIRST DONATE編集長 髙崎投稿日: 2025年12月24日2025年12月24日カテゴリー 世界の社会課題タグ 戦争/紛争, 難民/移民

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