【徹底考察】なぜ日本人は寄付しないのか?他国との比較やその文化的背景

日本では、寄付文化が根付いていないと言われることが多いです。

しかし、なぜ日本人は寄付に対して積極的ではないのでしょうか。本記事では、日本の寄付状況やその背景について、定量データや専門家の意見を交えながら解説します。寄付文化を浸透させるためには何が必要なのか、具体的な解決策も考察してみましょう。

本記事は以下資料より一部引用、参考にしています。
日本ファンドレイジング協会『寄付白書』
チャリティズエイド財団『World Giving Index 2021』

日本の寄付の現状

寄付金額と寄付者率の推移

まず、日本の寄付金額と寄付者率の現状を見てみましょう。最新の報告資料によると、2020年時点での日本の個人寄付総額は約1兆2,126億円と、2010年に比べて約2.5倍に増加しています 。これは、特に東日本大震災の影響が大きかったとされています。

寄付者率も増加傾向にありますが、2020年時点では44.1%と、まだまだ低いレベルに留まっています 。これには、寄付の文化や習慣がまだ十分に浸透していないことが影響していると考えられているようです。

世界人助け指数と日本の順位

世界的な視点で見た場合、日本は「World Giving Index 2021」で114カ国中107位、つまり「世界で最も寄付に冷淡な国」の一つとされています 。

この指数は、「寄付をしたか」「ボランティア活動をしたか」「見知らぬ人を助けたか」という質問に基づいて評価されており、日本は他国と比べて非常に低い評価を受けています。

他国との比較

アメリカとの比較

アメリカの寄付文化は非常に活発です。2020年のアメリカの個人寄付総額は約34.6兆円であり、日本の約30倍に相当するんですね。

また、GDP比で見ると、アメリカの寄付はGDPの1.55%、日本は0.23%です。これはアメリカにおいて寄付が経済活動の一部として重要な役割を果たしていることを示しています。アメリカに住む人にとって寄付は日常的な行為であることがわかりますね。

イギリスとの比較

イギリスもまた寄付文化が浸透している国の一つです。

2018年のイギリスの個人寄付総額は約1.5兆円であり、日本の約1.25倍です。GDP比ではイギリスの寄付はGDPの0.47%で、日本の約2倍に当たります。

日本の寄付が少ない理由

宗教的背景

日本人が寄付に対して消極的な理由の一つに、宗教的背景が挙げられます。

例えば、アメリカやイスラム教圏では宗教的な理由で寄付が盛んであり、キリスト教やイスラム教では、富を分け与えることが宗教的な義務とされており、その影響で寄付文化が根付いています。

一方、日本では無宗教者が多く、寄付に対する宗教的な教えが少ないため、寄付文化が根付いていないと指摘されているようです。日本人にとって一般的な寄付のイメージといえば、赤い羽根やコンビニエンスストアのレジ横にある募金箱などでしょうか。

中には小中学校で募金箱を持って街頭に立ったことのある方もいらっしゃるかもしれませんが、どうしても”やらされている感”が拭えませんね。

慈善団体への不信感

日本人は慈善団体に対して非常に高い不信感を持っています。世界価値観調査によると、日本では慈善団体に対して「非常に信頼する」と答えた人は2.2%、「ある程度信頼する」と答えた人は29.1%に過ぎません​​。約70%の人が寄付したお金が適切に使われるか不安を感じているため、寄付意識が低くなっています。

この不信感の背景には、日本人のアイデンティティも影響しているようです。日本社会では「出る釘は打たれる」という諺が象徴するように、目立つことや他人と異なる行動をすることに対して警戒感があります。これにより、寄付をすることが周囲から批判されるのではないかという懸念が生じますね。

寄付行為が「偽善」として捉えられることも少なくありません。私たち多くの日本人は、自分の善行が他人にどう見られるかを非常に気にしており、慈善行為をすることが「自己満足」や「見せかけの善意」と見なされることを恐れ、行動が消極的になるのです。このような心理的要因が、寄付文化の浸透を妨げているとも言えるでしょう。

さらに、日本人は「自己責任」の意識が強い傾向があります。OECDのデータによると、「政府は貧しい人たちに対する援助を減らすべき」と答えた日本人は17%であり、他国と比べても高い割合です​​。この自己責任の意識が強いほど、他者を助けるための寄付やボランティア活動に参加する意欲が低くなることがわかっています。

このような文化的背景や心理的要因が重なり合い、日本における寄付行為への抵抗感や慈善団体への不信感を強めているようです。

日本社会全体でこれらの問題を克服し、寄付文化を育てるためには、信頼性の高い慈善団体の評価や、寄付の透明性を高めるための取り組みが不可欠かと思います。

経済的余裕の欠如

日本人の収入が伸び悩んでいることも寄付が少ない理由の一つです。実質賃金指数は1995年から低迷し続けており、収入に対して物価が上昇しているため、寄付に回せる余裕がないと感じている人が多いのです。

特に昨今のインフレにより物価高騰の状況下では、可処分所得が減り、寄付に対するニーズが下がっているとも言われています。

税制優遇の不十分さ

寄付に対する税制優遇も不十分です。

アメリカでは所得の50%までが寄付控除の対象となるのに対し、日本では40%までに制限されており、このような税制の違いが寄付意識を低くする要因となっているようです。

寄付先の選択肢の少なさ

日本では寄付できる団体の数が少なく、選択肢が限られているため寄付がしにくい状況にあります 。アメリカでは寄付先が豊富であり、寄付しやすい環境が整っているのに対し、日本ではそのような環境が不足しています。

特にアメリカにおいては民間のNPO団体の他に、以下のような機関や団体が寄付を求めています。

  1. 教育機関
    • 大学や高校の奨学金基金
    • 学校や教育プログラムへの寄付
    • 公立学校支援団体
  2. 医療・健康関連団体
  3. 社会福祉団体
  4. 国際援助団体
  5. 芸術・文化団体

これらの多様な寄付先は、アメリカにおける寄付文化の豊かさを示しています。個人が興味や関心に応じて寄付先を選ぶことができるため、寄付行為がより身近で日常的なものとなっています。日本でも、このように寄付先の選択肢を増やし、寄付しやすい環境を整えることが重要ですね。

日本でできる寄付のスタイル

主な寄付方法

日本での寄付のスタイルにも様々な方法があります。以下に主な寄付方法を紹介します。もしかしたら「これも寄付なの?」と思われるようなものもありますので、ぜひ自分ごととして読むようにしてみてください。

  • NPO法人の公式サイト: 直接寄付が可能。多くのNPO法人がオンラインでの寄付を受け付けています。
  • ふるさと納税: 節税効果と返礼品の魅力で人気。応援したい自治体や地域に寄付できる制度。
  • クラウドファンディング: 購入型・融資型・寄付型の3種類があり、寄付型であれば寄付金控除の対象になる場合がある。プロジェクトごとに支援できるため、透明性が高いのが特徴です。
  • コンビニのレジ募金箱: お釣りを募金箱に入れる、専用端末から寄付。手軽に寄付できる方法として多くの人に利用されています。
  • 駅前での募金活動: 小銭でも寄付可能。日常的に見かける機会が多く、気軽に参加できるのが利点です。
  • ポイントやマイレージの寄付: 有効期限が近づいたポイントやマイレージを寄付。使い道がないポイントを有効活用できます。
  • 不用品や食べ物の寄付: 使わなくなった物や食品を寄付。物資を必要としている団体や人々に役立てられます。
  • 遺贈寄付: 遺言に基づいて財産を寄付。生前に意志を表明することで、遺産を社会貢献に活かすことができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
日本の寄付が少ない背景には宗教的要因、慈善団体への不信感、自己責任意識、経済的余裕の欠如、税制優遇の不十分さなどが挙げられます。これらの問題を解決し、寄付文化を浸透させるためには、以下の方策が重要だと言われています。

  1. 寄付の意義と社会貢献の啓蒙: 寄付がどれだけ社会に貢献しているかを広く知らせる。
  2. 慈善団体の情報公開: 慈善団体の活動内容や寄付の使い道を透明にし、信頼を築く。
  3. 教育の重要性: 幼少期から寄付の重要性を教える教育プログラムを導入する。
  4. 税制優遇の拡充: 寄付による税制優遇を手厚くし、手続きを簡素化する。

日本人一人ひとりが寄付の意義を理解し、積極的に行動することで、社会全体が豊かになることが期待されています。国や行政では手が行き届かないような問題や課題に対して、寄付は市民が社会を変え、作っていくための非常に重要な行為です。私たちの小さな一歩が、大きな変化をもたらす可能性があるんです。

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投稿者: FIRST DONATE編集長 髙崎

非営利団体のファンドレイジング/広報支援を生業とするDO DASH JAPAN株式会社スタッフであり、FIRST DONATE編集長。 自身の体験を元に、寄付やソーシャルグッドな情報収集/記事制作を得意とする。