2023年4月、「こども家庭庁」が発足しました。
日本で初めて〈こどもを真ん中に据えた政策司令塔〉を標榜し、児童虐待・いじめ・子どもの貧困など縦割りで散在していた施策を一元化する――大きな期待と共に船出した組織です。
あれから1年あまり(2024‐25年春)。こども家庭庁は何を達成し、何がまだ途上なのでしょうか。
今回は最新の統計や公表資料を基に 成果と課題 を整理し、さらに現場で子どもを支える民間NPOの取り組みを紹介します。30代の読者、そして子育て世代のみなさんが 「次世代への投資」 として今日からできるアクションも提案します。
目次
1. こども家庭庁とは何か――設置の背景と1年間の主な動き
1-1 設置の経緯と3本柱
- 2022年6月 こども基本法成立
- 2023年4月 内閣府外局としてこども家庭庁(CFA: Children & Families Agency)発足
- 施策の3本柱
- 共生部門(妊娠・出産・保育・教育)
- 成育部門(健やかな成長支援)
- 支援部門(虐待・いじめ・貧困など困難ケースへのアウトリーチ)
1-2 「こどもまんなか実行計画」と 2025年度予算案
こども家庭庁は 2023年末、初の「こども大綱」と行動計画「こどもまんなか実行計画」を策定。
2025年度予算案では「低所得世帯の学習・生活支援事業」の実施自治体を現在の264→440以上へ拡大、大学受験料の助成枠を新設など、貧困対策を厚めに配置しました。
2. データで読む:1年間で何が変わったのか
指標 | 直近の公表値 | 前年度比 | コメント |
---|---|---|---|
児童虐待相談対応件数 | 22万5,509件(2023年度) | +5.0%増 | 発足後も過去最多を更新ホーム|厚生労働省 |
子どもの相対的貧困率 | 11.5%(2022年調査) | 0.5pt改善 | 依然9人に1人が貧困状態認定NPO法人キッズドア |
児童福祉司増員計画 | 目標:+1,060人 → +700人見込み | −360人 | 人材確保が目標未達の見込み教育新聞|教育を変えるファクトがある。 |
待機児童数 | 2,567人(2024年4月) | −113人 | コロナ禍以降で最少水準こども家庭庁 |
こども食堂数 | 10,866箇所(2024年12月) | +1,734箇所 | 初めて1万を突破、公立中学校数を超えるむすびえ |
所見
- 量的指標は二極化:待機児童減少などポジティブな動きがある一方、虐待相談は増加。児童福祉司の不足が深刻。
- 貧困率は足踏み:11.5%は2010年代前半と同水準で、劇的な改善には至っていない。
- 地域コミュニティの自発的支援(こども食堂など)は急拡大。官民連携の好例と言える。
3. 成果:見えてきた3つの前進
3-1 “こども目線”を打ち出した政策体系
こども基本法と大綱により、すべての政策を「こどもの最善の利益」で評価する枠組みが明文化され、縦割りをまたぐ調整の権限が強化されました。
3-2 貧困世帯への学習・進学支援拡充
- 大学受験料・模試受験料の助成(最大53,000円+8,000円)
- 学習支援員を児童館等へ配置する新制度(25年度 440自治体目標)
3-3 アウトリーチ型支援の本格化
SOSを出しづらい家庭に自治体職員が訪問するモデル事業を全国38市区町村で試行。
伴走支援員が家計・学習・居住を一体でサポートし、制度を横串でつなぐ取り組みが進んでいます(こどもまんなか実行計画重点施策)。
4. 課題:なお残る4つの壁
- 虐待通告は過去最多 ―背景にコロナ後の生活困窮とDV増加。早期発見システム整備が急務。ホーム|厚生労働省
- 児童相談所の人員不足 ―増員目標未達成。福祉司の離職率も高い。教育新聞|教育を変えるファクトがある。
- 貧困率横ばい ―家計支援は限定的。子ども食堂など民間施策頼みの側面。認定NPO法人キッズドア
- 評価指標が定まらない ―「成果」を測るKPIが一部曖昧で、政策効果の可視化が遅れ気味。
5. 官民協働のキープレーヤー:民間NPO5選
こども家庭庁が掲げる“共生社会”を現場で支えるのが民間団体です。
ここでは寄付で応援できる国内NPOを5つ紹介します。
5-1 認定NPO法人キッズドア(東京都)

- ミッション:経済困窮家庭へ「無料学習会」と食糧支援
- 実績:2024年度、全国55拠点で延べ12,000人の子どもをサポート。オンライン学習支援も拡大。認定NPO法人キッズドア
- 寄付の使途:学習教材費・弁当代・講師交通費。月1,000円のサポーターで子ども1人の週1回学習会を支援。
5-2 NPO法人 Learning for All(LFA)

- ミッション:大学生ボランティアを軸に学習・居場所・食事を一体提供
- 実績:2023年度、首都圏6自治体で約3,100人がプログラムを利用。学力偏差値+8ptの効果を確認。learningforall.or.jp
5-3 認定NPO法人フローレンス「こども宅食」

- ミッション:行政と連携し“食”を入口に家庭の困りごとをアウトリーチ
- 実績:2023年度、文京区モデルで1,700世帯へ年間6回の食材配送+見守り。利用家庭の孤立感が20%改善。こども宅食 – 子供の貧困問題に対する新たな解決策 –
5-4 認定NPO法人むすびえ(全国こども食堂支援センター)

- ミッション:全国のこども食堂ネットワーク構築・調査研究
- 実績:2024年12月時点で10,866箇所へ拡大、食品企業からの寄贈仲介数は前年比1.4倍。むすびえ
5-5 あしなが育英会

- ミッション:親を亡くした・障がいで働けない家庭の子どもへの奨学金
- 最新動向:2024年度は申請過去最多。寄付募集により2025年度採用枠を**+500人**拡大予定。あしなが育英会
6. 「次世代への投資」として私たちが今日できること
6-1 継続寄付で伴走する
月1,000円からのマンスリーサポートはNPOにとって生命線。1年間続ければ子ども1人を学習会に通わせる費用に相当します。
6-2 “時間”を寄付する
- 学習ボランティア(オンライン可)
- こども食堂での配膳や宿題サポート
- 企業スキルを活かすプロボノ参加
6-3 声を上げ、政策を後押しする
SNSで施策の進捗を共有し、地方議会や国会議員へのパブリックコメントを活用する。KPIの透明化を求める市民の声は政策改善を加速させます。
6-4 職場の制度を活用する
- マッチングギフト:社員寄付に会社が同額上乗せ
- 子ども基金付き商品を購買し寄付金を生む
おわりに――「こどもまんなか社会」実現は私たちの手に
こども家庭庁から1年。制度は動き始めたが、数字はまだ動いていない――これが率直な通信簿です。児童虐待は増え、貧困率も高止まり。しかし一方で、こども食堂や学習支援など 民間の挑戦 は確実に広がり、国もアウトリーチ型支援へ舵を切りました。
子ども支援への寄付やボランティアは、未来の社会への先行投資。あなたのアクションが一人の子どもを笑顔にし、やがて社会全体の活力を底上げします。さあ、「こどもまんなか」の輪に加わりましょう。
今日の一歩
- 気になったNPOのサイトを開く
- 月1,000円の継続寄付ボタンを押す
- SNSで「#こども家庭庁1年」をタグ付けしてシェア
あなたのそのクリックが、子どもたちの未来を照らす灯になります。