子どもの【体験格差】とは?その背景と解決策/支援団体6選

「子どもの体験格差」という言葉が注目を集めています。
これは、子どもたちが学校外で得られる体験機会に大きな格差が存在することを指しています。体験とは、旅行や自然体験、習い事、博物館や美術館の訪問、さらにはスポーツや文化活動など、子どもが学校以外の場で経験するすべての活動です。

しかし、経済的な問題や地域の違い、さらには親の意識や環境の影響によって、これらの体験機会に大きな差が生じており、これが子どもたちの将来にまで影響を与えていると言われているのです。

たとえば、高収入の家庭の子どもは習い事や旅行、文化的なイベントに参加する機会が豊富ですが、経済的に困難な家庭の子どもたちはそうした機会に恵まれないことが多くなっています。この格差は、非認知能力や社会性、さらには将来的な職業選択や収入にも影響を及ぼすと指摘されています。

では、この「体験格差」とは具体的に何なのでしょうか?
また、それを解消するために私たちができることは何でしょうか?
今回は、体験格差の現状や背景を探り、解消するための取り組みや支援団体について詳しく紹介していきたいと思います。


子どもの体験格差とは?

体験格差の定義と背景

体験格差は、主に経済的・地域的な要因によって、子どもが学校外で得られる体験に差が生じることを指します。
例えば、家族での旅行やアウトドア体験、スポーツや習い事など、豊富な体験を得ることができる子どもがいる一方で、経済的に困窮している家庭では、そうした体験が提供できないという現実があります。文部科学省も、「子どもの体験活動が将来の自己肯定感や社会的スキルに影響する」として、この問題に注目しています。

具体例と統計データ

具体的な例として、高収入家庭の子どもと低収入家庭の子どもとの間での体験機会の差が顕著です。
例えば、世帯収入によって、旅行に行ける割合には約1.8倍の差があるというデータがあります。また、自然体験や文化体験など、経済的な理由で制約を受けやすい体験においても、同様の格差が確認されています。これらの格差は、学力や社会性だけでなく、将来的な職業選択や収入にも影響を与える可能性があるのです。

体験格差が与える影響

体験格差は、子どもの非認知能力の発達に大きな影響を与えます
非認知能力とは、学力以外のスキル、たとえば自己肯定感や感情のコントロール能力、社会的スキルなどを指します。これらのスキルは、将来の職業選択や社会での成功に直結するものです。例えば、家族での旅行やスポーツ活動を通じて、問題解決能力や協調性が育まれる一方で、そうした機会に恵まれない子どもは、自分の可能性を十分に発揮できないまま成長するリスクがあります。


今と過去における体験格差の違い

昔と現在の子どもたちの体験の違い

昔と今では、子どもたちが得られる体験の種類や質が大きく変わりました。
例えば、かつては自然と触れ合う体験や地域の祭りといった、誰もが無料で参加できる体験が豊富にありました。しかし、近年では都市部と地方での体験機会の差が拡大し、特に地方では自然体験や文化体験の場が減少しています。
また、都市部でも、子どもが自由に遊べる公園や公共施設が少なくなり、家庭での負担が大きくなっています。

IT格差と体験格差

さらに、IT技術の発展に伴い、オンライン体験やデジタルデバイスへのアクセスが重要な要素となっています。
しかし、ここでも経済的な格差が影響し、ITリテラシーや機器の所有状況に大きな差が生じています。特に、低収入家庭ではインターネットへのアクセスが限られ、子どもたちがオンラインで学習や体験をする機会が大幅に制限されている現状があります。

コロナ禍の影響

近年のコロナ禍では、外出や対面での活動が制限され、子どもたちが学校外で体験を得る機会が大きく減少しました。
この期間、特にIT格差が拡大し、オンライン学習やバーチャル体験にアクセスできる子どもとできない子どもとの間で、さらなる格差が生じました。これにより、経済的な背景が子どもの学習意欲や将来の社会参加に直結する状況が一層深刻化しました。


体験格差を解消するための取り組み

公的機関やNPOの取り組み

体験格差を解消するために、いくつかの公的機関やNPOが積極的に活動しています。例えば、「キッズドア」や「チャンス・フォー・チルドレン」では、経済的に困難な家庭の子どもたちに対して、無料で参加できる体験プログラムを提供しています。
これらのプログラムでは、自然体験や文化活動、さらにはスポーツ活動が含まれており、子どもたちが社会的スキルや自己肯定感を養うことができます。

また、「リディラバ」が主導する「体験格差解消プロジェクト」では、子どもたちに無料で参加できるイベントや旅行を提供しています。これにより、経済的に厳しい家庭でも、子どもが一生の思い出となるような体験を得ることができます。

企業との連携プロジェクト

さらに、企業との連携も重要な役割を果たしています。例えば、アソビューや越後妻有里山協働機構との協力による体験プログラムでは、アートや農業、自然体験を通じて、子どもたちに新しい興味や関心を引き出す機会が提供されています。これらのプログラムは、ただのレジャーではなく、将来のキャリア選択や自己成長に繋がる貴重な経験を提供しています。


体験格差解消に取り組む主な支援団体

認定NPO法人カタリバ

活動内容: 経済的に困難な家庭の子どもたちに、学校外での学びと体験を提供する「居場所づくり」や「放課後プログラム」を運営。

主な取り組み: 居場所の提供、非認知能力育成プログラム、地域との協働活動。

ウェブサイト: カタリバ

認定特定非営利活動法人 Learning for All

活動内容: 貧困や学習困難に直面する子どもたちを対象に、学習支援と体験活動を提供。ボランティアによるマンツーマン指導なども行う。

主な取り組み: 学習支援、文化体験プログラム、ボランティア育成。

ウェブサイト: Learning for All

認定NPO法人3keys(スリーキーズ)

活動内容: 社会的に孤立しやすい子どもたちに対し、居場所づくりや学習支援、体験活動を提供。特に、児童養護施設や貧困家庭の子どもたちに重点を置く。

主な取り組み: 居場所提供、イベントや体験活動の実施。

ウェブサイト: 3keys

公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン

活動内容: 低所得家庭の子どもたちに対して、学びの機会とともに、スポーツや文化的な体験を支援。教育バウチャー制度を通じて、塾や習い事に参加する費用もサポート。

主な取り組み: 教育バウチャー、自然体験や文化体験の提供、学習支援。

ウェブサイト: チャンス・フォー・チルドレン

株式会社Ridilover(リディラバ)(体験格差解消プロジェクト)

活動内容: 体験格差を解消するため、旅行や文化活動、自然体験を無償で提供するプログラムを実施。特に経済的に困窮している家庭の子どもたちを対象。

主な取り組み: 無償での自然・文化体験ツアー、子どもたちの社会参加支援。

ウェブサイト: リディラバ

キッズドア

活動内容: 経済的に困難な家庭の子どもたちに、学習支援や体験の機会を提供。特に、IT格差を解消するためのPCやWi-Fi端末の貸し出し、ITスキルの習得支援プログラムも実施している。

主な取り組み: 学習支援、IT機器の貸し出し、自然体験・文化体験の提供。

ウェブサイト: キッズドア


体験格差解消のために私たちができること

寄付やボランティアの重要性

体験格差を解消するために、私たちができる最も簡単かつ効果的な方法の一つは、支援団体への寄付です。
これにより、困難を抱える子どもたちがさまざまな体験を得られる機会が増えます。また、ボランティア活動に参加することも、直接的な支援の一環として大変意義があります。


体験の「質」にも注目を

体験格差について考える際、量だけでなく「」にも目を向けるべきだと筆者は感じます。
単に多くの体験をさせることが重要なのではなく、子ども一人ひとりに合った「深い体験」があるかどうかがポイントです。例えば、旅行に行くこと自体も重要ですが、その旅行が子どもの興味関心に沿ったものであれば、より深い学びや感動が得られるでしょう。質の高い体験は、子どもたちの心に深く残り、将来の選択肢や生き方に大きな影響を与えると考えています。


まとめ

体験格差の問題は、経済格差や地域格差だけでなく、家庭環境や社会全体の構造的な問題とも深く関わっています。
子どもたちが平等に多様な体験を得られる社会を目指すためには、私たち一人ひとりがこの問題を理解し、支援団体への寄付やボランティアを通じて具体的な行動を起こすことが求められています。また、体験の「質」にも注目し、子どもたちにとって本当に意味のある体験を提供できる社会を築くことが重要です。

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投稿者: FIRST DONATE編集長 髙崎

非営利団体のファンドレイジング/広報支援を生業とするDO DASH JAPAN株式会社スタッフであり、FIRST DONATE編集長。 自身の体験を元に、寄付やソーシャルグッドな情報収集/記事制作を得意とする。