【難病】とは?課題や支援方法。子どもたちの未来について

難病」という言葉を聞くと、多くの人が不治の病や治療が極めて難しい病気を思い浮かべるかもしれません。
難病患者は常に入院している、もしくは外見からも病気がわかる、というイメージがあるでしょうか。しかし、現実はそれほど単純ではありません。
実は、日本国内にも数多くの難病患者が存在しており、外見からは健康に見える人も多く、彼らは日常生活の中で見えない困難に直面しています。

日本では、難病に指定されている疾患は700種類以上もあり、その影響を受けているのは成人だけでなく、多くの子どもたちも含まれます。
この記事では、難病の定義や日本における難病を取り巻く現状、患者や家族が抱える課題、さらには支援の必要性について詳しく掘り下げ、私たちがどのように支援や寄付、募金を通じて彼らをサポートできるのかを探っていきます。


難病とは?その定義と具体例

難病の定義

難病は、一般的に「治療法が確立していない病気」として認識されていますが、法律上の定義はもう少し複雑です。
日本では、難病法(正式名称: 「難病の患者に対する医療等に関する法律」)によって次のように定義されています。

  • 発病の原因が不明である
  • 治療法が確立していない
  • 希少な疾患である(患者数が少ない)
  • 長期間の療養が必要である

これらの要件を満たす疾患が「難病」として指定され、医療費助成などの公的支援が行われます​。

代表的な難病

難病の中でも、特に広く知られているものとして、筋萎縮性側索硬化症(ALS)1型糖尿病脊髄性筋萎縮症(SMA)などがあります。これらの病気は、非常に稀でありながらも進行が早く、患者や家族に大きな負担を強いるものです。

たとえば1型糖尿病は、患者の体がインスリンを生成できなくなる自己免疫疾患で、毎日のインスリン注射が欠かせません。患者は一生涯にわたりこの治療を続けなければならず、常に血糖値を管理する必要があります​​。

日本では700種類以上の難病が確認されており、約25万人以上の子どもがこれらの病気と闘っています。多くの難病は治療法が見つかっておらず、研究が進んでいるものの、完全に治す方法は確立されていないのが現状です​。


日本における難病の課題

患者の苦労

難病患者は、病気そのものの辛さだけでなく、周囲の理解を得にくいという困難に直面しています。
外見からは健康に見えることが多いため、仕事や学校でのサポートが十分に受けられず、誤解や偏見にさらされることも少なくありません。また、病気が重度になると長期入院や在宅療養が必要になり、経済的な負担も大きくなります。

長期療養に伴い、通院費や治療費は家計に重くのしかかり、さらに患者の家族が看護や介護のために仕事を辞めざるを得ない場合もあります。

このように、家族全体が病気と闘うことになり、精神的にも肉体的にも大きな負担を抱えることが多いのです​​。

医療団体の苦労

難病の治療や研究に取り組む医療団体にとっても、課題は山積しています。
まず、治療法が確立されていないため、治療の進展に時間がかかることが大きな問題です。加えて、長期的な研究には多額の資金が必要ですが、難病は希少であるため、研究への支援や資金が十分に得られないケースが多々あります​​。

さらに、治療法がない患者に対しては、医療者が患者や家族に精神的なサポートを提供することも重要ですが、それにも限界があります。精神的なサポート体制が整っていないことも多く、医療従事者自身が十分な支援を提供できない状況に悩んでいます​。


日本の難病支援の現状

医療費助成制度

日本では、難病法に基づき、特定の難病患者に対して医療費助成が行われています。
これにより、経済的に困難な状況にある患者が、自己負担を軽減しながら治療を続けることが可能となっています。しかし、すべての難病が対象となっているわけではなく、軽症の患者や特定の条件を満たさない場合には、助成を受けられないこともあります​。

また、地域ごとの医療資源の差や支援体制の違いにより、地方に住む患者が必要な支援を十分に受けられないという問題も存在しています。
都市部では支援団体や医療機関が整備されている一方で、地方に住む患者は十分な治療やサポートを受けられないことが多く、支援の地域差が大きな課題となっています​。

支援団体の活動

日本には、難病患者やその家族を支援するさまざまな団体が存在します。
これらの団体は、患者や家族に対して心理的なサポートや情報提供を行うだけでなく、社会全体に難病に対する理解を広める啓発活動にも力を入れています。

例えば、認定NPO法人日本難病・疾病団体協議会(JPA) は、難病患者の声を国に届けるための請願活動や政策提言を行い、毎年多くの署名を集めて国会に提出しています。また、難病法の成立に大きく貢献した団体でもあり、現在も全国的なネットワークを通じて、患者の生活改善を目指しています​。

さらに、認定NPO法人 難病のこども支援全国ネットワーク では、難病の子どもとその家族に対して直接的な支援を行っています。彼らは、サマーキャンプ「がんばれ共和国」や地域交流活動を通じて、難病の子どもたちと家族に対し、楽しく過ごせる場を提供し、社会との繋がりを感じられるような活動を展開しています​。

また、レスパイトケアの一環として、一時的に子どもたちを預かり、家族がリフレッシュできる場を提供する施設も整備されています。これにより、家族が看護や介護から解放され、心身の休息を得ることができるため、長期的なケアにおける負担軽減に繋がっています​。

レスパイトケア(Respite Care)とは、主に介護や看護を必要とする患者の家族に対して、一時的な休息を提供する支援サービスです。
難病を抱える子どもやその家族にとって、長期的な看護や介護は心身に大きな負担をかけるため、家族がリフレッシュし、心身の疲労を回復させる機会が必要です。レスパイトケアでは、専門の施設や医療機関で患者を一定期間預かり、家族が一時的にケアから離れることができるようにします。

このケアは、家族の負担を軽減し、長期にわたる介護が続けられるようサポートする目的があります。
レスパイトケアは家族だけでなく、患者自身にとっても新しい環境や専門的なケアを受けることで、気分転換やリラックスの機会を提供する効果があります。特に難病の子どもを持つ家族にとっては、必要不可欠なサポートの一つとされています。


寄付や募金による支援

寄付の方法

難病患者を支援するための寄付には、さまざまな方法があります。継続的に支援を行う「マンスリーサポーター」や、一度きりの「単発寄付」、不要品を提供する「不要品寄付」、ふるさと納税を通じた支援など、多様な形で寄付が可能です​​。

たとえば、認定特定非営利活動法人 日本IDDMネットワーク では、1型糖尿病の根治を目指す研究のための寄付を募集しています。月々1,000円から始められる寄付は、試験管を使った実験の費用として使用され、寄付者の負担に応じた支援が可能です​。

さらに、寄付には税制上の優遇措置もあります。寄付金控除を受けることで、寄付者は所得税や法人税の負担を軽減することができ、個人や企業にとっても負担が少なく、長期的な支援を行いやすくなります。このような優遇措置を利用しながら、多くの人が気軽に支援に参加できる仕組みが整っています​。

キフコのひと言

近年では、寄付型のクラウドファンディングが支援を集める新しい方法として注目されています。こ
インターネット上のプラットフォームを利用して、個人や団体が特定のプロジェクトや活動のために寄付を募る有効な手法なんです。
寄付型のクラウドファンディングでは、支援者は資金を提供する見返りとして金銭的リターンを期待せず、社会的な意義や共感を目的に寄付をします。

例えば、難病の研究資金を集めるプロジェクトや、難病の子どもたちを支援する活動など、具体的な目標に対して多くの人々から小口の寄付を集めているんです。
クラウドファンディングのひとつの特徴として、目標金額や支援の進捗状況がリアルタイムで可視化されているので、寄付による参加の意義を感じやすくなっています。

寄付型クラウドファンディングは、手軽に参加でき、支援の輪を広げる有力なツールとして、多くの団体が活用しているので、ぜひチェックしてみてくださいね。

寄付先の団体

寄付を通じて支援できる団体は多数存在します。以下の団体は、難病患者やその家族を支援するための活動を行っており、寄付金は研究、患者支援、啓発活動などに使用されています。

認定特定非営利活動法人日本IDDMネットワーク

日本IDDMネットワーク

日本IDDMネットワークは、1型糖尿病患者とその家族を支援し、最終的に1型糖尿病の根治を目指すことを目標としています。発症直後の患者へのサポートや、治療法開発のための研究支援を行っており、幅広い活動を通じて患者の生活を支えています。

活動内容:

  • 1型糖尿病患者へのサポートと相談活動
  • 治療法の開発を目指す研究資金の提供
  • 糖尿病に関する啓発活動

公益財団法人 難病医学研究財団

難病医学研究財団

難病医学研究財団は、難病の原因解明や治療法の開発を目指す研究を推進する団体です。研究者への助成金を提供し、難治性疾患の研究を支援することで、難病患者の生活の質向上を目指しています。寄付は、治療法確立に向けた研究費として使用されます。

活動内容:

  • 難病の原因解明に関する研究の助成
  • 難治性疾患の治療法開発の推進
  • 難病関連の情報提供と啓発活動

認定NPO法人 難病のこども支援全国ネットワーク

難病のこども支援全国ネットワーク

難病のこども支援全国ネットワークは、難病の子どもたちとその家族を支援するために、相談や交流の場を提供しています。特に、サマーキャンプや地域活動を通じて、子どもたちが安心して楽しく過ごせる環境を整えています。また、医療ケアを伴ったイベントも実施しています。

活動内容:

  • 難病の子どもたちと家族への相談活動
  • サマーキャンプ「がんばれ共和国」の開催
  • プレイリーダーによる遊びや交流の提供

公益財団法人メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパン

メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパン

メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパンは、難病と闘う子どもたちの「夢」を叶えることで、精神的な支援を行う団体です。夢の実現を通じて、子どもたちとその家族に希望を与え、病気に立ち向かう力をサポートします。世界的に広がる団体の日本支部として活動しています。

活動内容:

  • 難病の子どもたちの夢を実現する活動
  • 夢実現までのプロセスでの家族支援
  • 社会貢献活動への参加促進

公益財団法人 京都大学iPS細胞研究財団

京都大学iPS細胞研究財団

京都大学iPS細胞研究財団は、iPS細胞の実用化を目指し、iPS細胞や関連技術を研究機関や企業へ提供しています。これにより、再生医療の普及を推進し、多くの患者が恩恵を受けられる医療を実現することを目指しています。また、研究開発のコスト削減に向けた技術革新も進めています。

活動内容:

  • 臨床用および研究用iPS細胞の提供
  • iPS細胞の品質評価試験の提供
  • iPS細胞ストックプロジェクトの推進
  • 研究開発における技術提供とコンサルティング

特に子どもが難病になった場合の支援

子どもへの支援が特に重要な理由

子どもが難病にかかると、身体的な影響だけでなく、精神的な負担も大きくなります。
成長期において学校に通えなくなったり、同年代の子どもたちとの交流が制限されたりすることで孤立感が深まり、社会との繋がりを失ってしまう恐れがあります。
また、子どもが長期的に治療を受けることによって、家族全体が精神的・経済的に疲弊し、親が仕事を辞めざるを得なくなるケースも多々あります​​。

支援団体の活動

子どもとその家族に対する支援は、難病の中でも特に重要視されています。
先ほどご紹介した認定NPO法人 難病のこども支援全国ネットワーク が提供するサマーキャンプ「がんばれ共和国」や「青空共和国」では、子どもたちが安全に遊び、リラックスできる環境を提供しています。
医師や看護師、専門家が常駐することで、医療的なケアを受けながらも安心して参加できるプログラムが展開されています​。

さらに、プレイリーダーやピアサポートを通じて、難病の子どもたちが楽しめる時間を提供する取り組みも行われています。特に、プレイリーダーは病院や在宅療養中の子どもたちの元を訪れ、遊びを通じて彼らの心のケアを行っています​。

ピアサポートとは、同じ経験を共有した人々が互いに支え合うサポート活動のことを指しています。
難病や慢性疾患を持つ患者やその家族の間で行われるピアサポートは、同じ病気を経験した者同士だからこそ分かる苦労や感情を共有し、共感を通じて心理的な安心や安全を提供します。

ピアサポーターは、自らも難病や障害を経験した人が多く、その体験を活かして他の患者や家族の不安や孤独感を軽減する役割を果たしているのです。

医療専門職が提供する治療とは異なり、精神的な面でのサポートが主な目的であり、患者や家族が孤立せず、コミュニティの中で共に支え合う大切な取り組みとされています。


まとめ

難病患者、特に子どもに対する支援は、医療面だけでなく、精神的・社会的なサポートが重要です。
病気と闘う子どもたちやその家族にとって、希望や安心を提供するためには、私たち一人ひとりの寄付や支援が不可欠です。

寄付や支援の始め方はとてもシンプルであり、少額からでも始められます。
マンスリーサポーターとして継続的に支援することも、単発での寄付も、どちらも大きな力となりますから、今回ご紹介した団体を通じて、寄付がどのように使われているのかを知り、私たちができる範囲で支援を行うことが、難病患者にとって明日への希望をもたらす第一歩です。ぜひご検討ください。

ファスドネはこの団体さんを応援しています!

NPOポケットサポートの代表三好さん

認定特定非営利活動法人『ポケットサポート』

長期の入院や療養によって、学習や体験の機会を失ってしまう子どもたちがいます。

そうした子どもが将来に希望を持って暮らせる社会を1日でも早く実現するために、学習・復学支援、交流イベント、各種相談・機関連携などの活動をされています。

このポケットサポートの活動に共感いただける方はぜひ詳細をご覧ください!

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投稿者: FIRST DONATE編集長 髙崎

非営利団体のファンドレイジング/広報支援を生業とするDO DASH JAPAN株式会社スタッフであり、FIRST DONATE編集長。 自身の体験を元に、寄付やソーシャルグッドな情報収集/記事制作を得意とする。