怪しい?『働けば?』の声も。【街頭募金】詐欺に遭わないためにできること。信頼できる募金先の見極め方

街頭募金は、駅や公園、街の通りなど、日常生活の中でも目にすることが多く、不特定多数の人々から寄付を募るため、通行人や寄付者が直接関与できる特徴があります。
しかしながら、中には偽善や怪しいなどといった怪訝な声、または募金を集めるくらいなら働けばいいのに。なんて声も少なくありません。

今回はこの街頭募金について、掘り下げていきたいと思います。

街頭募金は、海外の人道支援や災害支援など、迅速な資金調達が求められる場面ではとても有効な方法とされていますが、例えば東日本大震災の際には、日本中でも多くの街頭募金が行われ、短期間で多額の寄付が集まりました。
この街頭募金の特徴は、単に寄付を集めることだけではなく、人びとの共感を引き出し、社会課題への関心を高める効果もあわせ持っていると言われています。

募金には、街頭以外にもオンライン寄付やクラウドファンディングなどさまざまな形態がありますが、街頭募金は「顔の見える」寄付方法として、社会的な信頼が直接寄付につながる特異な形態といえるでしょう。

歴史と背景:日本と海外の比較

街頭募金の起源は戦後の復興支援活動にさかのぼりますが、当初は傷病兵や遺族支援のための手段として広まりました。1940年代以降、国内各地で街頭募金が実施され、日本の復興に貢献する市民活動のひとつとして根付いていきました。その後も、東日本大震災やその他の災害時には多くの街頭募金が行われ、社会においてその重要性が再認識されている側面があります。

一方イギリスでは、募金活動が法的に厳格な管理下に置かれているのが特徴です。1960年に制定された「チャリティ法」は、募金活動の透明性を確保するための一環として、チャリティ団体に登録義務を課し、その後も度々改正されてきました。
例えば、2011年の改正では、募金の認可や活動の継続性がチャリティ委員会の権限として定められ、違反時には厳しい罰則が科せられるようになっています。
日本も、募金団体に対してある程度の規制はありますが、許認可制度は都道府県単位に分かれているためイギリスのような一元的な管理は行われていません。

いずれにせよ、募金活動自体は社会的に大きな役割を果たしていますが、日本では市民主体での活動が中心で、緊急時の即応性が重視されている一方、イギリスでは法制度によって社会全体で管理される構造が整備されており、信頼性の確保において多少の違いが見られます。


運営のルールと信頼確保

信頼がとても大事である街頭募金において、その運営者は募金活動の透明性を守るための具体的なルールに従う必要があります。
日本ファンドレイジング協会は、街頭募金の信頼性を高めるための指針を定めており、主に以下の点が推奨されています。

  1. 実施主体の明示:募金を行う団体名や連絡先、代表者などを募金場所で掲示し、参加者に対してその団体の存在や目的を明確に伝えること。特にパンフレットや看板を用意することで、寄付者が団体に直接問い合わせができるような体制を整えることが重要である。
  2. 募金の目的と使途の提示:単に「寄付をお願いします」という呼びかけだけでなく、募金がどのように使われるのか具体的に示すことで、寄付者が安心して寄付できる環境を整える必要がある。チラシやポスター、団体のSNSで募金目的を周知することで、活動の透明性を担保すべき。
  3. 法令順守:道路使用許可など、募金活動を行う場所に応じた許可をきちんと取得し、法的な手続きを守ることが必須。都道府県によっては事前の届け出が必要な場合もあり、これを守ることで地域住民の信頼を得ること。
  4. 募金集計の透明性:募金箱の管理や集計方法についても厳密に管理し、活動終了後には、募金場所や金額を公表することが求められる。集めた資金がどのように使われたかを示すことも含め、募金団体は継続的な報告を行うことで信頼関係を構築する必要がある。

街頭募金の運営には、透明性の確保が何よりも大切だと言われています。
これらのルールを徹底することで、寄付者が安心して支援を行うことができ、団体の信頼性が一層高まるでしょう。

街頭募金に対する批判や疑問

「働けば?」という声とその背景

街頭募金に対する批判の中で、特に多いのが『募金活動をするよりもアルバイトをして、その稼いだお金を寄付する方が効率的では?』という意見です。
この考えの背景には、街頭での募金活動が労力の割に資金調達効率が低いと見なされがちなことが挙げられそうです。『1時間街頭に立つよりも、同じ時間アルバイトをした方がより多くの金額を寄付できるのでは?』という効率重視の見方です。

しかし、街頭募金には直接的な金銭の収集を超える価値があります。
例えば、街頭募金の活動中に通行人に話しかけることで、寄付だけでなく社会課題に対する意識を高めることができるという点です。募金活動の目的は単にお金を集めるだけではなく、通行人と直接コミュニケーションを取ることで、その場で関心を持たなかった人にも社会問題や支援の必要性を訴えかけることができるという効果があります。

さらに、募金活動にたずさわる人自身も、街頭での活動を通じて「社会貢献に直接携わっている」という達成感を得られるため、活動が継続しやすくなったり、その団体への愛着や責任感が強くなるといわれています。

寄付金をただ稼ぐだけでは味わえない、人と人とのつながりが形成されるのも街頭募金の魅力のひとつです。金銭的効率が必ずしも最優先ではなく、街頭募金が持つ共感の連鎖“が、他の寄付方法にはない価値といえるんです。


『偽善では?』という批判

街頭募金やボランティア活動に対して『偽善では?』と批判されることも少なくありません。この疑念の背景には、『本当に支援がしたいわけではなく、自己満足や自己アピールのために活動しているのでは?』とった懐疑的な見方があるようです。こうした批判にさらされると、特に真剣に活動を続けている人びとにとっては不快に感じる場面もあるかもしれません。

しかし、『偽善でも何もしないより良い』という視点もないでしょうか。もし「偽善的だ」との批判を恐れて誰も活動をしなければ、支援を必要とする人たちに手を差し伸べる機会は失われてしまいます。
たとえ偽善と見なされる側面があったとしても、支援の結果が寄付者にとっての「自己満足」で終わらずに、実際に役立てられるのであれば、社会的に有益な行為といえるのではないでしょうか。

偽善との批判は、往々にして「誰もがすぐには取り組めない」課題に対する批判としても現れがちです。しかし、街頭募金をきっかけに社会課題に興味を持つ人も多くいます。自分の中での変化が生まれ、社会貢献への理解が深まることで、最初は「偽善」に感じたとしても、そこから誠実な支援者に変わっていくこともあります。社会的な活動は、善意の延長で支えられる部分が大きく、このような人びとの少しずつの行動が、実は大きな変化を引き起こす要素になっているのです。


このように、街頭募金に対する批判や疑問には一定の理解もできますが、単純に効率や動機だけでははかりきれない「共感を広げる力」が街頭募金にはあるのです。活動の一環としての価値を多面的に見つめることが、街頭募金の意義を理解する上で大切な視点といえるでしょう。

【募金詐欺】とは?詐欺に遭わないための注意点

募金詐欺の定義と手口

募金詐欺とは、社会貢献や人道支援を装って人びとの善意を利用し、寄付金を騙し取る行為を指します。
最近ではインターネットやSNSの普及によって募金詐欺はさらに巧妙化し、手口も多岐にわたるようになっています。詐欺の手段には、災害支援を名目にしたものや、動物保護を装ったもの、さらには信頼性が高そうに見えるクラウドファンディングを利用した詐欺にまで多様化しており、災害時や社会的関心が高まるニュースに便乗する悪質なケースが増えています。

具体的には、募金詐欺の中には、信頼のある団体名を装った偽のホームページや、緊急性を強調するメッセージで寄付を呼びかける手口があります。こうした詐欺は、災害や難民支援など、誰もが支援したいと考えるテーマで行われることが多く、支援を考える人びとが多く集まるため、詐欺師たちが利用しやすい状況を生み出してしまいます。街頭募金も例外ではなく、特に不特定多数の人びとから少額ずつ集めるような方式では、被害が把握しづらいのが現状です。
実際に詐欺が発生した場合、個々の被害額は少額でも全体では多額になるため、早期の対策が求められています。


具体的な詐欺手口

  1. 災害支援を装った詐欺
    大規模な自然災害が発生した際、被災者支援や救援活動を名目にした詐欺が特に多く発生します。たとえば災害発生直後に「被災地に直接支援が必要です」といったメッセージをかかげ、寄付を募る手口が典型例です。災害に対する人々の関心が高まっているタイミングを狙って行われるため、こうした緊急支援詐欺は被害が広がりやすく、さらには災害地の具体的な地名や支援内容を挙げて、より緊急性を装うケースも多く見られます。
  2. 動物保護を装った詐欺
    動物愛護への関心が高まる中、動物保護や介助犬育成のための支援を呼びかける詐欺も増加しています。実際に動物と一緒に街頭で寄付を募るなどして信憑性を高め、SNSやクラウドファンディングで動画や画像を掲載し、動物保護のための寄付を装う手口が多発しています。こうした詐欺の一部には、実際に動物を使い、被害者に寄付を促すケースもあり、寄付金の流れが不透明なまま詐取されることが少なくありません。
  3. 実在団体を装った街頭募金詐欺
    街頭での募金活動においても、実在の団体や信頼性の高い組織を装って活動する詐欺が発生しています。街頭で寄付を募る際には、警察署の道路使用許可証を提示するケースが多いのですが、これは信頼性の証明ではありません。実際には、許可証は道路使用のための書類に過ぎないため、それが団体の信頼性を保証するものと誤解しないように注意が必要です。特に不安を感じた場合は、募金箱や団体名でその場ですぐにインターネット検索し、活動内容や過去の実績が明確かを確認すると良いでしょう。

こうした手口は、一見してなかなか見分けがつきにくいことも多いため、寄付する前には情報収集を行い、寄付先が正当な団体であるかを慎重に判断することが重要です。

信頼できる寄付先を見分けるには、団体の活動実績や、公式の報告書や認証制度(例えば「認定NPO法人」など)を確認することが有効です。また、活動報告を頻繁に行っている団体や、ホームページやSNSで実績を公開している団体であれば、信頼性が高いと考えられます。


寄付を通じて社会に貢献したいという善意が悪用されないために、募金詐欺のリスクを理解し、詐欺の手口に対する警戒心を持つことが大切です。
少しでも不審な点を感じた場合には、その場での寄付や決断は避け、一度家に帰って冷静になってから考えるようにしましょう。

信頼できる募金先を見極める方法

信頼できる寄付先を確認するためのチェックポイント

募金詐欺が増加している今、信頼できる寄付先を見極めることは私たち自身の責任としても大事です。ここでは、寄付先の信頼性を確認するための具体的なチェックポイントを紹介します。

  1. 団体名を検索し、公式情報を確認
    寄付を考えている団体名をインターネットで検索し、公式サイトや認定ページを確認することは基本です。信頼性のある団体は、公式サイトやSNSアカウントを持ち、活動内容や寄付金の使途を詳しく記載しているはずです。
  2. 活動内容や使用目的が明確であるか
    寄付金の使途が具体的に説明されているかどうかは必ず見るようにしましょう。例えば、「被災地の子どもたちの教育支援」や「環境保護活動のための費用」といった具体的な説明があれば信頼性が高まります。曖昧な表現で「支援活動に使用」とだけ記載されているような場合には、慎重に検討してください。
  3. 財務情報や活動報告の公開状況
    信頼できる団体であれば、定期的に活動報告や財務情報を公開しています。財務状況が透明であることは団体が寄付金を適切に管理している証です。特に認定NPO法人などの認定団体では、運営費用や寄付金の使途が公開されているため、信頼性が高いと判断できます。
  4. 認定ステータスの確認
    「認定NPO法人」や「公益財団法人」など、政府や自治体から認定を受けている団体は通常のNPO法人よりも厳しい基準で管理されています。認定NPO法人であれば、税制優遇の対象ともなっているため、認定団体かどうかを確認することで信頼度を見極めることが可能です。

まとめ

街頭募金は、寄付者と支援団体を直接結びつける重要な手段として、社会課題への意識を広める役割を果たしています。
一方で懐疑的な意見、疑問や、募金詐欺のリスクもつきまといます。今回は街頭募金の意義や批判の背景、詐欺の手口、そして信頼できる団体の見極め方や募金活動者が守るべきルールについて、各視点から詳細に解説しました。

募金先の信頼性を確認することや、活動の透明性を保つことは、寄付者が安心して支援を行える環境を整える上で欠かせませんが、その直接性や共感を広げる効果は、単なる金銭的な効率を超えて、寄付者と支援活動を支えるための重要な基盤となっているのです。

キフコの一言

最近では、テクノロジーの進化によって募金活動やNPO団体の情報発信手段も少しづつ変わっています。
街頭募金では信頼性向上のために、活動中に「QRコード」を使って公式サイトや活動報告へのリンクを配布していたりと、寄付者が即座に団体の信頼性を確認できるようにする取り組みが導入されていたりします。

また、寄付のDX化によって、街頭募金とオンライン寄付のハイブリッド型アプローチが今後のスタンダードとなる可能性も見逃せません。
街頭での活動を通じて「共感」を喚起し、その後もオンラインでのフォローアップや寄付を促すことで寄付者との長期的な関係を築くことができますよね。

こうしたアプローチが定着すれば、街頭募金の「顔が見える」特性と、オンライン寄付の透明性や効率性が相互に補完し合って、寄付者がもっと信頼して支援できる仕組みが整っていくのかもしれません。

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投稿者: FIRST DONATE編集長 髙崎

非営利団体のファンドレイジング/広報支援を生業とするDO DASH JAPAN株式会社スタッフであり、FIRST DONATE編集長。 自身の体験を元に、寄付やソーシャルグッドな情報収集/記事制作を得意とする。